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任天堂Switch、あえて低スペック維持の理由…後継機種発売、来年5月が注目?

取材・文=文月/A4studio
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「Nintendo Switch」(任天堂のHPより)

 テレビの大画面でプレイできる据え置き型ゲーム機としても、手軽に持ち歩けて出先でもプレイできる携帯ゲーム機としても遊べる「Nintendo Switch」。ゲーム情報サイト「ファミ通.com」の発表によると、2022年9月18日時点で「Nintendo Switch」「Nintendo Switch Lite」「Nintendo Switch(有機ELモデル)」の国内累計販売台数は2620万6521台を記録。

 対して、任天堂のゲーム機事業のライバルともいえるソニーの「PlayStation 4」「PlayStation 5」「PlayStation 5 デジタル・エディション」の同時期の国内累計販売台数を見ると、その数字は974万5553台。Switchとの差は歴然である。

 価格帯やユーザーの目的、趣味、趣向などによって購入の動機はさまざまなので、一概に両者を比較できないものの、販売実績だけでいえばSwitchが国内ゲーム機業界の覇権を握っているのは明白であろう。

 そんなシェアの高さを誇るSwitchだが、スペックは低いことがたびたび指摘されている。なかでも9月14日に、あるTwitterユーザーが投稿したツイートが話題となっていた。

「Switchが想定以上に覇権ハードになってしまったせいでメーカーもスペックに合わせた開発に色々苦労してるんだろうなというのはわかるし、いいかげんスペックアップ版Switchも出したほうがいいだろとは思う(ゼノブレ3の動作が時々怪しくなる事を経て)」

 美麗なグラフィック、緻密なゲームシステムなど我々が遊べるゲームのレベルは年々高くなり続けている。しかし、プレイの土台となるハードのスペックが低いと、せっかくの高クオリティなゲームも満足に遊べない。しかも「Switchの性能は現行のiPhone以下」ともいわれている。

 投稿主が主張するように、多くのゲームファンからSwitchの後継機種の発売が待ち望まれている。すでに巷では「4K対応の後継機種が発売される」といった噂もあるようだが、いまだに任天堂からは正式なアナウンスは出ていない。

 そこで今回は、東京工芸大学特別講師でありテクニカルジャーナリストの西川善司氏に、Switch後継機種がどうなるのかについて、予測しながら語ってもらった。

任天堂というブランドは強いがスペックはやや残念……

 西川氏いわく、任天堂のゲーム機は競合他社とそもそもの設計思想が異なるのだという。

「任天堂の競合であるソニーのPlayStation、マイクロソフトのXboxシリーズは、新しいゲーム体験をユーザーに与える“コンピューターエンターテインメント”という戦略のもと、ゲーム事業を展開しています。ただこの設計思想を掲げるとなると、サードパーティとなるさまざまなゲームソフト開発会社にソフトを作ってもらわなければなりません。そのため美麗なグラフィック、優れた操作性の実現を可能にし、なおかつソフトを開発しやすいゲーム機の発売を目指す傾向にあります。

 対して任天堂はゲーム機の性能競争でいえば、2001年発売の『ニンテンドーゲームキューブ』の時点で打ち止め。元来、任天堂はゲーム機の性能よりも『自社の提供するソフトを遊んでほしい』という思いが強い企業なので、自社で考えたゲームを動かしてユーザーに遊んでもらうためのゲーム機、という前提のハードウェア設計をしています。つまり基本的にファーストパーティ(任天堂)目線なんです。

 そして、それは2006年発売の『Wii』からさらに顕著になりました。Wiiでは従来のパッド式のゲームコントローラーを廃止し、リモコン型のコントローラー・Wiiリモコンに切り替えましたよね。リモコンを振ってゲームを楽しむWiiは、任天堂の思想を色濃く反映し、斬新なゲーム体験を生んだハードでして、まさに任天堂の転換期といえるもの。

 任天堂からすれば、自分たちの考えた斬新なアイデアのゲームを実現できているので、前提の目標は達成できているわけです。しかし、サードパーティからすると少し開発しづらいハードになっているのは事実でしょう」(西川氏)

 競合他社とのスペック差を気にせず、独自のゲーム哲学でハードを設計する任天堂。Switch好調の理由もそうした方針に隠されているのかもしれない。

「据え置き機、携帯機のどちらとしても遊べるというメリットは大きいですね。2012年発売の携帯ゲーム機『ニンテンドー3DS』の日本でのシェアが高く、そのユーザー層を維持するために両立させたのだと考えられます。Nintendo Switchは価格が3万2978円(税込)とほかのゲーム機と比べると安めなので、購入しやすかったのもシェア拡大の一因でしょう。

 あとはやはり自社ソフトが強い。『スーパーマリオ』『ゼルダの伝説』『星のカービィ』『ポケットモンスター』『どうぶつの森』『大乱闘スマッシュブラザーズ』『スプラトゥーン』など、任天堂のハードでしか遊べないタイトルが盛りだくさんですからね。そうした独自性も人気のひとつです」(同)

 任天堂の発売するソフトが遊びたいからSwitchを買ったという人は多いだろう。とはいえ、確かに任天堂でしか味わえないゲーム体験はあるだろうが、一方でSwitchのスペックが低いことは事実のようだ。

「ゲーム機としてのSwitchの性能は、現行世代から見ると微妙です。コンピュータの処理性能を表わすTFlops(テラ・フロップス:浮動小数点演算を1秒間に1兆回行うことを表す単位)という単位があるのですが、Switchはその値が0.5。今のiPhoneが1TFlopsを超えているのが当然であることを踏まえると、どうしても見劣りしてしまいます。

 Switchのスペックが低い要因としては、搭載されている半導体メーカー・NVIDIAのチップが関係しています。2015年、NVIDIAはゲームができたり、美麗映像が観られたりする『セットトップボックス』を発売したのですがこれが大コケ。チップが大量に余ってしまい、どうやって処分しようかとNVIDIAが悩んでいた際に、任天堂は素早く交渉し、格安で仕入れることができたんです。ただSwitchの発売は2017年。発売時点ですでに2年遅れのチップになっているので、技術面では必然的に後れを取らざるを得ませんでした」(同)

発売されるとしたら新作『ゼルダ』が出る2023年5月?

 やはり高クオリティなゲームをNintendo Switch向けに開発すること自体、かなり無理のあることなのだろうか。

「そうですね。美しいグラフィック、大容量のゲームをSwitchで開発する際には、かなり苦労するとサードパーティのメーカーなどからよく聞きます。そして、そもそも満足にプレイできないこともあり得るんです。特に『フォートナイト』『APEX LEGENDS』などのオンラインFPS(ファースト・パーソン・シューティング)は、ハードウェアのスペックが高いほど操作性が良くなる傾向にあるので、Switchではまともにプレイできないなんてことも。たとえば、SwitchのプレイヤーとPS5のプレイヤーで戦ったとき、1秒間に表示されるフレーム数に差があってPS5が有利すぎるため、勝負にならないと嘆くユーザーもいるほどです」(同)

 西川氏の言う通り、Switchのスペックではプレイがほぼ不可能、もしくは操作性が悪くなってしまうゲームタイトルは少なくない。今後ユーザーの声を受けて、任天堂がより高クオリティなゲームを発売するのであれば、Switchのスペックでは対応しきれない可能性もあるだろう。となれば、なおのことSwitchの後継機種の発売が急がれそうだが……。

「Switchのシェアの高さを見ると、実のところ任天堂はそこまで後継機種の開発を急いでいない気もします。またコロナ禍で世界的な半導体不足に見舞われたり、物流が滞ったりしたことも開発が遅れている理由のひとつでしょう。ただ任天堂のハードの歴史を見れば、5~6年おきに新ハードが発売されてきましたので、来年以降何らかの動きがあるかもしれません。

 個人的には、ファンから待望されていた2023年5月12日発売予定の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』に注目すべきかと。というのも、任天堂のビッグタイトルが発売されるときは、連動してハードの発売も発表される傾向にあるんです。たとえば、2006年12月2日にWiiで発売された『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』は、もともとゲームキューブ用に開発されたソフトでしたが、開発期間がWiiへの移行期間と重なり、結局Wiiで発売。ゲームキューブ版はというと、任天堂オンライン上のみの発売となりました。

 ですから今までの傾向を踏まえると、もしかすると来年5月前後にSwitchの後継機種についてのなんらかのアナウンスがあるかもしれません」(同)

 シェアが高いSwitchだが、スペックの低さゆえにユーザーの間では不満がちらほらたまっている様子。早く後継機種で、任天堂ならではの新しいゲーム体験をしてみたいものである。

(取材・文=文月/A4studio)

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A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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