生協こと生活協同組合(CO・OP<コープ>)のプライベートブランド(PB)菓子商品「森のチョコの木」が、明治のロングセラー商品「きのこの山」「たけのこの里」に酷似しているのではないかという「パクリ疑惑」がSNS上で話題となっている。「森のチョコの木」は4種類の三角帽子型のミルクチョコとビスケットから成り、見た目も構成要素も「きのこの山」とほぼ同じ。商品名に使用される「森」「木」「チョコ」という単語も、チョコを使用する「きのこの山」「たけのこの里」を連想させる。そのため、「コープの『森のチョコの木』は『きのこの山』『たけのこの里』と同じシリーズの商品だと思っていた」(40代女性)という声も聞かれ、消費者に誤解を与える可能性も指摘されている。果たしてコープは「森のチョコの木」を企画・販売するにあたり、「きのこの山」「たけのこの里」の知名度への便乗を意識していたのだろうか。また、「森のチョコの木」が商標法・意匠法・不正競争防止法などに違反している可能性はあるのか。コープと明治、専門家の見解などを交えて検証してみたい。
3000万人を超える組合員を有する生協は、宅配事業と店舗事業で年間3兆円もの供給高(売上高)を誇り、その店舗数は全国で900以上に上る。一流通事業者としてみても規模は大きく、他の大手流通企業と同様に数多くのプライベートブランド(PB)を取り揃えている。
そんなPB「コープ商品」の一つである「森のチョコの木」は、頭のチョコの部分に関してはやや縦長で、どちらかといえば「きのこの山」よりも「たけのこの里」の形状に似ており、きのこの山のスナック部分がクラッカーなのに対し、ビスケットを使用している点が違いといえる(「たけのこの里」はクッキーを使用)。また、「森のチョコの木」はカルシウムと全粒粉を含んでいると謳っている点も大きな違いだ。
一方、「きのこの山」の特徴を整理してみよう。その歴史は古く、1970年に初の試作品がつくられ、開発に約5年の歳月がかけられ75年に発売。販売期間は約半世紀にもおよぶが、現在では一般化しているチョコとスナックを組み合わせた菓子、チョコスナックジャンルの草分け的存在の1つでもある。79年には姉妹品の「たけのこの里」が発売され、現在でも「きのこの山派か、たけのこの里派か」というテーマが話題になるなど、多くのファンを有するロングセラー商品である。
ちなみに、「きのこの山」(74g)は東京都内のスーパーでは182円(税込み/以下同)となっており、 コープの「森のチョコの木」(14.5g×8袋入:116g)は250円前後。100gあたりに換算すると、「きのこの山」は約246円、「森のチョコの木」は約216円となる。また、「森のチョコの木」は全体の形状的には「きのこの山」に似ているが、スナック部分にはビスケットが使用されており、味の面ではクッキーをチョコで包んだ形の「たけのこの里」に似ているという声も聞かれる。
<生協が一線を超えてきた>
そんな両商品をめぐり、「森のチョコの木」が「きのこの山」をパクっているのではないかと一部で話題となり、SNS上では以下のような声が寄せられる事態に発展している。
<生協が一線を超えてきた>
<似てる…>
<これは流石に>
<生協のプライベートブランドにもチョコきのこっていう限りなくグレーな商品が>
<生協で買えるチョコのお菓子がきのこの山とたけのこの里くっつけたみたいな見た目>
<実家が生協ユーザーだったのできのこの山といえばウチではこれのことだった>
<幼少期から生協のきのこの山バッタもんを食べて育ち明治のやつにはあまり馴染みがなかった>
<生協さんたらパクリだと思ったら、チョコの部分は形が4種類もあるんですねぇ 努力は感じられます>
<生協で売ってるチョコ菓子に、きのこの山のビスケットと、たけのこの里のチョコが悪魔合体してる奴が出てる>
不正競争防止法に抵触の可能性
では、コープは「森のチョコの木」の開発・発売において、「きのこの山」「たけのこの里」をどこまで意識していたのか。また、酷似しているとの声についてどう受け止めているのだろうか。
「お問い合わせの商品につきましては、本年6月の時点で販売不振が継続している状況であったことから、本年9月30日をもって終売することとしていました また、そういうご指摘があることを認識いたしましたので、今後の商品開発の際には、消費者の皆様に誤解を与えることのないよう、これまで以上に留意してまいります」(コープ)
一方の明治は類似点が取り沙汰されている点について、次のようにいう。
「色々なご指摘があることは承知しております。それらのご指摘について法律上の妥当性も含めて検討をしてきたところです。当社としては、ブランド等の無形資産が重要であると認識しており、しかるべく様々な取り組みを進めておりますが、個別の案件については回答を差し控えさせていただきます」(明治)
気になるのが法的な問題点だ。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「不正競争防止法という、他人の営業成果に便乗するような行動を禁止する法律を考えるに、『他人の有名な商品を真似すること』に違反するかどうかは問題になります。ここでポイントは『狙ってやっているか』です。今回の場合、あれほど有名な『きのこの山』ですので、消費者はこのコープの商品を見れば、きっと『きのこの山みたいに美味しいだろう』と考えて買ってしまうでしょう。こういった、フリーライドを禁止するのが不正競争防止法です。したがって、不正競争防止法としては、アウトですね。(しがない一法律家のあてはめです)」
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)