この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は林賢一氏が、バターに関する謎に迫ります。
【ご回答いただいた企業】
明治お客様相談センター様
もっとも手軽に大量のカロリーを摂ることができる食材はバターだそうだ。探検家の方が言うには、南極を移動している時はとてつもなくカロリーを消費するので、バターを丸ごとかぶりつくくらいでないと体力が持たないそうだ。
すごいぞ、バター。よし、疲れたときにはバターだ、そう思ってパッケージを見ると、こんな注意書きが目に飛び込んでくる。
「開封後はなるべくお早めにお召し上がりください」
このような注意書きはよく見かけるが、南極での極限状態ならまだしも、平穏な日本で暮らしている身としては、「なるべく早く」とはどれくらいなのかと気になってしまう。
美女がベッドから「なるべく早く来て」と言うのであれば、3分程度は待たせても大丈夫だろう。同僚が居酒屋から「なるべく早くね」とLINEなどでメッセージを送ってきた場合、30分程度は大丈夫だろう。オカンが子供に「なるべく早く帰ってきなさい」と声をかけるならば、陽が沈むまで遊んでいても大丈夫だろう。
だが、バターに関してはわからない。王道の疑問ではあるが、意外とちゃんと聞いたことはなかった。
「お早めに」の具体的日数
そこで、明治お客様相談センター様に直接聞いてみた。
「バターに『開封後はお早めにお召し上がりください』と記されていますが、どれくらいが目安ですか」
担当者 2週間くらいとお考えください。
–開封前であれば半年ほど賞味期限がありますが、開封すると短いですね。
担当者 賞味期限は長いのですが、一度開封してしまうと、どうしても表面が空気と触れることで黄色に変わってしまいます。
–確かに、変色しますね。
担当者 色が変わってしまっても品質に問題はないのですが、徐々に風味なども落ちてきますので、なるべくお早めにお召し上がりください。
–今のは賞味期限(おいしく食べられる期限)でしたが、消費期限(食べても安全な期限)だと、どれくらいですか?
担当者 やはり温度の影響を受けることによって、品質が早く劣化することがあります。そのため、長い場合では開封してから2~3カ月もつこともあります。ただ、冷蔵庫のドアの開閉頻度が多いと温度の影響を受けてしまいますので、なるべくお早めにお願い致します。
—バターは冷凍できますか?
担当者 はい。使いやすいサイズに切って冷凍保管していただくことは可能です。乾燥しないようにラップなどに包んで保存してください。
–冷凍だと、どれくらいもちますか?
担当者 冷凍でも同様に2週間くらいとお考えください。
–結局は同じなんですね。
担当者 はい。
–冷凍した場合、使うときには常温解凍でよいのでしょうか。
担当者 常温解凍ですと急激に温度が変化しますので、できれば冷蔵庫で解凍してください。そのほうが風味も維持できます。
–ちなみに、マーガリンでも賞味期限は同じですか。
担当者 マーガリンも大体開封しましたら、2週間を目安にお使いいただくようお勧めしております。マーガリンも、弊社が製造しているチューブタイプですと、空気に触れる面が大変少ないので、開封後2週間から1カ月くらいが目途となります。
–ありがとうございました。
このように、「お早め」は、「2週間」という明確な答えが返ってきた。これは辞書に載せてもよいレベルなのではないだろうか。
【バター butter】(1)生乳から分離したクリームを練り固めた、脂肪を主成分とする食品。パンにつけるほか、料理に用い、菓子の材料にもする。
(2)パッケージに「お早めにお召し上がりください」との表記が多いが、「お早め」は2週間を指す。
こんな辞書があったら欲しい。
(文=酒平民 林 賢一/ライター)