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小学館、原作者から相次ぐ告発…映像化で意見を許されず、「契約書なし」も

文=Business Journal編集部
小学館、原作者から相次ぐ告発…映像化で意見を許されず、「契約書なし」もの画像1
小学館(「Wikipedia」より/Kounoichi)

 昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者の意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題。『セクシー田中さん』の制作にあたって原作者の芦原妃名子さんは、ドラマ化を承諾する条件として、原作代理人である小学館を通じて日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点などを提示していた。その小学館では過去にも、漫画『しろくまカフェ』のアニメ化で原作者が意見を伝える機会を与えられず、さらにアニメ化に関する原作者との契約も取り交わされないまま放送され、連載が休載に至っていたことがわかった。芦原さんは先月29日に亡くなり1週間以上が経過したが、日本テレビと小学館は詳細経緯の説明や調査を行う意向などを発表しておらず、小学館は社員向け説明会で経緯などを社外に発信する予定はない旨を説明したとも報じられている(7日付「Sponichi Annex」記事より)。

『セクシー田中さん』の問題をめぐっては、芦原さんが提示していた漫画に忠実にするなどの条件が小学館側から日本テレビに正確に伝えられていなかった可能性があるともニュース番組『Live News イット!』(フジテレビ系/1月30日放送)などで伝えられている。その小学館が、過去にも作品の映像化において同様の問題を起こしていたという告発が相次いでいる。

 同社が出版している漫画『海猿』は04年にフジテレビ製作で映画化されたが、原作者で漫画家の佐藤秀峰氏は今月2日、「note」上に『死ぬほど嫌でした』と題する記事を投稿。以下のように綴った。

<漫画家は通常、出版社との間に著作権管理委託契約というものを締結しています。出版社は作品の運用を独占的に委託されているという論理で動いていました。契約書には都度都度、漫画家に報告し許諾を取ることが書かれていました。が、それは守られませんでした>

<すでに企画が進んでいることを理由に、映像化の契約書に判を押すことを要求されました>

<こうして僕は映像に一切文句を言わない漫画家となりました。一方、出版社への不信は募ります>

<出版社は、テレビ局には「原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください」と言います。そして、漫画家には「原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい」などと言いくるめます>

 また、1997年にフジで放送された『いいひと。』(制作:共同テレビ・関西テレビ)で、制作サイドは原作漫画の作者、高橋しん氏との間で取り交わしていた、主人公のキャラクターや設定を変えないという条件を破り、改変して放送。これを受け高橋氏は「多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった」(高橋氏の漫画制作事務所「高橋しん・プレゼンツ」公式サイトより)ことに対し責任を取るかたちで、当時、小学館の「ビッグコミックスピリッツ」で連載中だった同作の連載を終了させていた。

 当時、高橋氏はその理由について「高橋しん・プレゼンツ」公式サイト上で次のように説明していた(以下、原文ママ)。

<終了を決めた直接のきっかけは、テレビドラマ化でした。関西テレビ・共同テレビのかたにドラマ化の許可を出すための条件の中に、ゆーじと妙子だけは変えないこと、という一文がありましたが、多くのかたが感じたように、ゆーじは変え「られて」いました。私は、もうこれ以上わたし以外の誰にも変えられずに、読者の方々の中の「いいひと。」を守ること、そして同時に多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった、その漫画家としての責任として私の生活の収入源を止めること、その二つを考え連載を終了させようと思いました>

 このほか、小学館の「週刊少年サンデー」で『金色のガッシュ!!』を連載していた雷句誠氏は、編集部とのトラブルが原因で2007年に同作の連載を終了させたが、一部カラー原稿を紛失されたため同社を提訴したことがある(のちに和解が成立)。同氏は『セクシー田中さん』問題についてX(旧Twitter)上で、

<一つ言えるのは日テレも小学館も、組織です。そして漫画家は個人です。コレだけ見ても芦原先生がいかに苦しい戦いをしたかがわかります>

と心境を明かしている。

「しろくまカフェ」問題

 そんななか、「しろくまカフェ」原作者の漫画家、ヒガアロハ氏は5日、X上で次のようにポストしている。

<無期限休載するというツイートをしたら、翌日小学館へ呼び出され、編集長とメディア事業部の人たちに囲まれて「ツイートは削除しろ」と言われました>

<今でもうっかり思い出すととても悔しいのが、読者の方からのお手紙やプレゼントを全部捨てられていたこと>

<あれからもう10年も経つし出版社も変わったし「当時のツイートは消していこうか」と考えていた矢先の、今回の出来事でした。私も当時はものすごく叩かれました。芦原先生がブログ記事を書かれたのが他人事ではなかったです>

 ヒガアロハ氏は小学館の漫画雑誌「flowers」で「しろくまカフェ」を連載中だった2012年、同作のアニメ化に際して制作サイドに意見を伝える機会を与えられず、アニメ化に関する契約書も取り交わされていなかったため、旧Twitter上で無期限休載を表明。その経緯について当時、以下のように投稿していた。

<先日、編集部と制作会社と私とで、話し合いの場を設けてもらいました。私が意見を言える初めての機会となりました。これまでの半年間くらい、あちこちに頼み続けてたつもりだけど、一向に取り合ってもらえなかったから、長かった>

<今月からの休載宣言と、知的財産管理の専門家に文書を作成してもらって配達証明で送るという手段を取って、やっと動かすことができました。話し合いには弁理士さんも同行してもらった。編集部側に全面的に非があるということで、謝罪してもらいました>

<アニメ関連については、まだ契約書が作成されてなくて、私は1円もいただいてないっす>

 同氏は先月30日、芦原さんの訃報を受けて、当時を振り返りつつ次のようにポストしている。

<出版社や制作側などなどが「原作者が泣き寝入りする」ことだけを期待している、あのプレッシャーの中で、作品を守ろうと奮闘するのは、とてつもなく大変でした>

<毎週会社まで呼び出されて疲れ切っていて、心の余裕が本当になかった>

<力不足で守れなかったんだけど…。でもあの出版社からは逃げられた。当時は「ここから出て行く!」を最大目標にして動いていた>

 テレビ局関係者はいう。

「コンプライアンス意識の浸透や、あらゆる権利関係の事柄への意識の向上もあり、現在では『のちのち揉めないように』という防御策としても原作サイドとの契約はしっかりと取り交わすようになっており、原作者の意向を無視するということも起こりにくい。ただ、テレビ局は原作者本人ではなく原作代理人である出版社とやりとりを行うので、原作者の意向が正確にテレビ局側、さらにはその先の脚本家に伝わらないケースは当然出てくる」

このまま幕引きの様相

 ドラマ制作における原作の取り扱いや原作者の権利保護が大きくクローズアップされテレビ界全体の問題となるなか、注目されているのが日テレと小学館の動きだ。日テレは芦原さんの訃報に際し先月29日と30日に次のコメントを発表して以降、沈黙を守っている。

<2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております>(先月29日)

<日本テレビとして、大変重く受け止めております。ドラマ『セクシー田中さん』は、日本テレビの責任において制作および放送を行ったもので、関係者個人へのSNS等での誹謗中傷などはやめていただくよう、切にお願い申し上げます>(先月30日)

 また、小学館も30日に

<先生の生前の多大なご功績に敬意と感謝を表し、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。先生が遺された素晴らしい作品の数々が、これからも多くの皆様に読み続けられることを心から願っております>

とのコメントを発表して以降、情報の発信は行っていない。前述のとおり今後も経緯などに関する社外発信を行わない意向だとも報じられているが、こうした両社の姿勢に対し疑問の声も寄せられている。たとえば、『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』(ともにTBS系)などで知られる脚本家の野木亜紀子氏は5日、X上に次のようにポストしている。

<両社ともこれ以上不幸が起こらないようにとは考えているだろうし、それは当然と思います。個人の責任を追求するということではなく、条件面での掛け違いがあったのならなぜそうなったのか、経緯説明が必要と感じます>

<どちらも大企業で、原作ビジネスで散々金儲けしておきながら、問題が起きたら個々のクリエイターに責任ぶん投げて終わりなんて、そんなことある?そんなことないと思いたいので、このままなかったことにはしないでもらいたいのです>

 日本テレビ関係者はいう。

「社内では正式に詳細を調査して対外的にその結果を公表するような動きはないし、今後もそのようなことはしないとみられている。ドラマ制作の過程において進め方に落ち度はあったのかもしれないが、日テレとしては小学館との間できちんと契約を結び、最終的には原作者の意向を取り入れて承諾を受けた脚本を決定稿としてドラマを制作したので、形式上は契約違反などはないというスタンス。もし調査した結果、日テレ側の不適切な進め方などが判明して謝罪に至るようなことになると、過去数年間に遡って全ドラマを調査しなければならなくなり、現在放送中のものや、すでに企画・制作が動き出しているものにまで影響してくるので、避けたいところだろう。

『セクシー田中さん』で表面化した問題は、どのテレビ局のドラマ制作現場も大なり小なり抱えており、これ以上掘り返されたくはないというのが各局共通の本音。なので、各局の報道・情報番組もこの事案に関しては扱いに消極的であり、テレビでの報道は下火になっている。テレビ界全体として、このまま幕引きに向かわせようとしている空気がある」

これまでの経緯

『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原さんは、ドラマ化を承諾する条件として日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点や、ドラマの終盤の「あらすじ」やセリフは原作者が用意したものを原則変更しないで取り込むという点を求めていたとされる。芦原さんが1月にブログなどに投稿した文章によれば、何度も大幅に改変されたプロットや脚本が制作サイドから提出され、終盤の9〜10話も改変されていたため芦原さん自身が脚本を執筆したという。

 問題が表面化したのは昨年12月のことだった。脚本を担当する相沢友子さんは自身のInstagramアカウントで、

「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」

「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています。どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」

と投稿。9話・10話の脚本は自身が担当していない旨を説明した。

 これを受けさまざまな憶測が飛び交うなか、1月に芦原さんは自身のブログ上で経緯を説明。ドラマ化を承諾する条件として、制作サイドと以下の取り決めを交わしていたと明かした。

<ドラマ化するなら『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく>

<漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様『原作者があらすじからセリフまで』用意する。原作者が用意したものは原則変更しないでいただきたい>

 芦原さんは、これらの条件は<脚本家さんや監督さんなどドラマの制作スタッフの皆様に対して大変失礼な条件>であると認識していたため、<この条件で本当に良いか>ということを原作漫画の発行元である小学館を通じて日本テレビに何度も確認した上でドラマ化に至ったという。

 だが、実際に制作が進行すると毎回、原作を大きく改編したプロットや脚本が制作サイドから提出され、

<漫画で敢えてセオリーを外して描いた展開を、よくある王道の展開に変えられてしまう>

<個性の強い各キャラクター、特に朱里・小西・進吾は原作から大きくかけ離れた別人のようなキャラクターに変更される>

といったことが繰り返された。そして1~8話の脚本については芦原さんが加筆修正を行い、9~10話の脚本は芦原さん自身が執筆し、制作サイドと専門家がその内容を整えるというかたちになったという。

(文=Business Journal編集部)

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