テスラ首位陥落、EV覇権は中国へ…BYD・シャオミが示した「量産×AI」の過酷な現実

●この記事のポイント
・2025年、テスラは世界EV販売首位から陥落。BYDやシャオミなど中国勢が、価格・航続距離・量産力で圧倒し、「テスラ1強」時代は終焉を迎えた。
・シャオミの高性能EVやBYDの垂直統合モデルが市場を席巻。EVは「未来の象徴」から「量産消費財」へと変質し、テスラの優位性は急速に薄れている。
・ロボタクシーやヒト型ロボットに活路を見出すテスラだが、中国勢はすでに量産段階へ。2026年は「期待」だけでは生き残れない正念場となる。
「テスラが負ける日が来るとは思わなかった」。EV業界関係者の多くが、そう口を揃える。
2026年1月2日、米テスラが発表した2025年の世界販売実績は、前年比8.6%減の163万6129台。一方、中国のBYD(比亜迪)はEV単体で前年比約28%増の225万6714台を記録した。その差はおよそ60万台。かつてイーロン・マスク氏が「中国勢は本物の競争相手ではない」と語っていた時代からは、隔世の感がある。
EV市場は、ついに「テスラ1強」の時代を終えた。
●目次
「スペックの暴力」──シャオミが突きつけた決定的格差
テスラの地位低下を象徴する存在が、中国スマホ大手・小米(シャオミ)だ。同社から2025年に投入されたSUV「YU7」は、テスラの主力車種「モデルY」を正面から打ち破った。

価格は約20万円安いにもかかわらず、車体は一回り大きく、航続距離は4割以上長い。
さらに、スマホや家電と完全連携する独自OS「HyperOS」によるUXは、テスラのミニマル思想を「機能不足」に見せつけた。自動車アナリストの荻野博文氏はこう語る。
「シャオミは“EVを売ろう”としたのではなく、“生活OSの一部としての車”を売った。その思想差が、価格以上の価値差になった」
ブランド力だけで高価格を維持できるフェーズは、すでに終わっている。
BYDの「垂直統合」に屈したテスラ
EV首位を奪ったBYDの真の強みは、圧倒的な垂直統合モデルにある。バッテリー(LFP)、パワー半導体、車体制御までを自社で抱え込み、価格と供給を完全にコントロールする体制は、テスラが真似しようとしても容易ではない。
テスラがモデルYの値下げで対抗する一方、BYDは100万〜200万円台のEVを世界規模で展開。2025年末には、ドイツ・英国など欧州市場で、月間登録台数がテスラの2倍以上となるケースも相次いだ。
欧州自動車市場がEV偏重から方針転換したことを受け、荻野氏はこう指摘する。
「EVが“未来の象徴”だった時代は終わり、いまは“普通の耐久消費財”になった。量産と原価低減で勝てないメーカーは、確実に淘汰される」
「オプティマス」と「ロボタクシー」に潜む二重の罠
EVでの敗色を覆す切り札として、マスク氏は以下の2つに賭ける。
・ヒト型ロボット「オプティマス」
・ロボタクシー「サイバーキャブ」
ヒト型ロボット:中国はすでに“量産フェーズ”
中国政府はロボット産業を国家戦略に据え、100社超が参入。宇樹科技(Unitree)などはすでに量産・販売を開始しており、価格はテスラ想定の半額以下ともいわれる。
「テスラは“すごい試作品”を見せているが、中国は“買える製品”を出している。この差は埋まらない」(同)
ロボタクシー:カメラ一本足の限界
テスラのFSDはカメラ重視だが、中国勢はLiDAR+AIの冗長構成を採用。小鵬汽車(シャオペン)は2026年中に、自動運転特化モデルを3車種投入する計画だ。
安全性への信頼が最重要となるロボタクシー市場で、「安価だが不安」という評価は致命的になる。
株価と販売台数の「デカップリング」が示す危うさ
2025年、テスラ株は大きく様相を変えた。
・前半:160ドル台まで急落
販売減少と廉価版「モデル2」中止報道が直撃。
・後半:実需なきリバウンド
ロボタクシー期待のみで株価が反発。
現在の株価(約450ドル前後)は、「2026年ロボタクシー成功」を100%織り込んだ水準ともいえる。
ある金融アナリストは「これは成長株ではなく、“技術イベント株”の値動きだ。一度失望が出れば、下げも速い」と警鐘を鳴らす。
テスラを巡る最大の変化は、ブランドの意味そのものだ。かつては「環境意識が高い、知的エリートの象徴」だったテスラが、いまや政治的シンボルになりつつある。
・欧州、カリフォルニアでの「テスラ離れ」
・トランプ政権との蜜月とEV補助金撤廃
・全米ショールームでの抗議デモ
「消費者が車を選ぶ理由に“政治的立場”が入り込んだ瞬間、市場は一気に狭くなる」(同)
テスラが2025年に首位を失った理由は、単なる技術力不足ではない。
ハード:中国勢にスペック・価格で完敗
ソフト:不確実な未来(ロボタクシー)への過度な依存
ブランド:マスク氏の言動による分断
「未来」という物語だけで株価と期待を支えるフェーズは、明らかに終わりを迎えつつある。2026年中にサイバーキャブの実用化という“誰の目にもわかる成果”を示せなければ、「EVの革命児」テスラは「中国勢に敗れた先駆者」となり得る。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











