年末年始の帰省や、子どもの冬休みに合わせた国内旅行などで、クルマで長距離ドライブする人も多いはず。最近は頻繁に、高齢者による暴走、あるいはあおり運転などのニュースが伝えられており、クルマを運転する際にはこうしたトラブルから自分の身を守る装備の必要性が高まっている。そのための強い味方のひとつが、ご存じ「ドライブレコーダー」である。
ドライブレコーダーの基本機能は、車両前方そして後方に取り付けたカメラが常時撮影を行っており、事故などの衝撃を感知した場合、その数秒前からの映像や音声を保存するというものだ。自動車メーカー系販売店だけでなく、いまやパーツ量販店やネット通販でも手軽に購入でき、安いモノでは数千円でも手に入れることができる。
高級輸入車ブランドのBMWは2019年11月21日のプレスリリースで、一部車種に標準装備されているパーキングアシスト機能用の車載カメラを、ドライブレコーダーとして利用できるという機能をオンラインで販売開始した。このシステムは、エアバッグが作動するような大きな衝撃を受けた際に、最大でその前後20秒、合計40秒間、車両の周囲360度の映像を自動的に記録するというもの。さらにマニュアル操作でも、最大40秒間、同様に車両の周囲360度を記録することが可能となるという。
自動車メーカーも、アピールのひとつとして取り入れ始めたドライブレコーダー。今回は、そんな数多くあるドライブレコーダーを利用する際の注意すべきチェックポイントなどを紹介していきたい。
GPS機能ナシは宝の持ち腐れ
かつては、ドライブレコーダーの画像や音声データは交通事故などの証拠にはならないといわれた時代もあった。しかし最近では、報道される多くの事例でも明らかなように、犯人逮捕にも寄与するなど、重要な証拠として扱われるようになっている。それはなぜか。その大きな要因のひとつに、GPS機能の搭載がある。
GPSとは、スマートフォンなどにも搭載されている位置データ取得機能のこと。GPSが搭載されているドライブレコーダーであれば、事故などのトラブルが発生した日時に加えて、「どこで発生したのか」の情報が克明に記録される。この位置データがあるのとないのとでは、万が一の事故発生時において、証拠としての信頼度に大きな差が出てしまう。したがって、ドライブレコーダーを購入する際には、まずはGPS機能が付いているかどうかを確認しておくべきだろう。
次にドライブレコーダーで重視するポイントは、画質と撮影する範囲だ。BMWは360度全周を録画するという、ものすごいスペックとなっていることは先述した通り。しかし、そこまでのレベルではないにしろ、カメラの画素数は200万画素以上、フルHD(1920×1080ピクセル)以上、撮影範囲は140度以上、そして明るさが急激に変わるトンネルや逆光時などに画像を最適な状態に補正してくれるHDRやWDRという機能が搭載されているかどうかが、ポイントとなってくる。いくら撮影できていても画像が鮮明でなければ、証拠としては採用してもらえない。そうなると、せっかくドライブレコーダーを装着していても宝の持ち腐れということになってしまうだろう。したがってドライブレコーダーは安さではなく、ここで紹介したような機能にこだわって購入したほうが、結果として自分の身を助けてくれるということになる。
スマホのドライブレコーダーは使えるか
また、ドライブレコーダーは記録用のメディアとしてSDカードが使用されていることが多いが、このSDカードなどのメディアにも注意が必要だ。こちらも容量と書き込み速度などにより価格差がある。ドライブレコーダーはこのメディアに頻繁に書き込み(上書き)を行うため、安いモノだとエラーが起きやすくなる。やはり、容量は大きめで、書き込み速度の速いメディアを選びたい。最近では「ドラレコ用」を謳ったメディアまでも販売されているので、そういったものを選ぶとよいだろう。
ドライブレコーダーのカメラは前方に対してだけと思いがちだが、最近のあおり運転などを考えると、前後2つのカメラを装着したほうが、より守備力は高まる。これまでは、前方カメラのほうが性能も高く、後方カメラは性能的にイマイチ……ということが多かったが、最近のあおり運転の多さによってか、後方カメラも性能が向上し、後続車のナンバーまでもしっかりと撮影できるようになっている。もちろん、1カメラのみのドライブレコーダーより価格は高くなってしまうが、2カメラあればあおり運転から身を守りやすくなる。さらに上述の360度録画タイプや車内撮影用のカメラが付いているタイプなどであれば、車庫に駐車している際の車上荒らしなどからも守ることができるようになるのだ。
多くのドライブレコーダーには強力な吸盤が付属しており、ダッシュボード上などに簡単に取り付けられるようになっている。しかし、実は日本の法律では、車内の好きな場所にどこでも設置していいわけではない。撮影できる範囲の設定や細かい調整なども必要となるので、ドライブレコーダーの取り付けは、専門店などのプロに任せるほうがいいだろう。
また、スマートフォンのカメラを利用してドライブレコーダーの代わりとして使用できるアプリもあるが、データをきちんと保存できるのかという問題、それから運転中のスマートフォン操作に対する罰則が強化されたといった問題もあるので、できれば専用のドライブレコーダーを装着するほうがベターだろう。
あおり運転を行う悪質ドライバーがいなければ、ドライブレコーダー市場のこうした急成長はなかったはず。しかし結局のところ、ドライバー一人ひとりの思いやりの気持ちの欠如や意識の低下が、このような交通状況を引き起こしているということは忘れてはならない。
(文=萩原文博/自動車ライター)