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木下隆之「クルマ激辛定食」

キャデラック「CT6」、アメ車のイメージを完全に崩壊!超軽量で安定性抜群、値段も驚異的な安さ

文=木下隆之/レーシングドライバー
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キャデラック「CT6」

 筆者は、1960年生まれの「キャデラック」というの名の響きがビンビンに突き刺さる世代ゆえ、最高級Lセグメントセダン「CT6」でのドライブは独特の感情に支配される。大陸的な優越感と、狭い日本での利便性の狭間で気後れしてしまうのだ。

 全長5230mm、全幅1880mmという長大なボディは、最近の肥大化されたLサイズセダンのなかでは標準的なサイズ感だといえるだろう。だが、いざ目の前にすると、なかなか優雅で迫力がある。むしろ特徴的なのは、全高が1495mmに抑えられていることだ。長く広く、そして低い。すんぐりとしたセダンが増殖する昨今の風潮を考えれば、容姿はごく正当なプレミアムセダンならではの落ち着きがある。威風堂々とした体躯は、キャデラックの名に恥じない。

 搭載されるエンジンは、期待したV型8気筒ではなく6気筒で、3.6リッターの排気量を持つ。最高出力は340ps、最大トルクは386Nmである。同じV型6気筒で3.6リッターの「XT5」用とは出力に差がある。パワーユニットは馬力もトルクも増強されているのが特徴だ。組み合わされるトランスミッションも、なんと10段ステップのATであり、低回転域の加速の頼もしさと、高速クルージングの静粛性と経済性に貢献している。駆動方式がAWDなのも特徴だ。

 乗り心地が良いのは当然のこととしつつ、いわゆる旧態依然のアメ車から連想するフワフワと船のようにロールやピッチングを繰り返すタイプではない。キャデラックが得意とするマグネチックライドの電子制御ダンパーは、瞬間的な減衰力変化が特徴だ。適度に締め上げており、フワフワ・グラグラの面影はない。車格はこれほど大きく優雅なのに、意外に引き締まったドライブフィールに驚かされる。

 この類型のモデルとしては異例に、後輪操舵を組み込んでいる。これによって旋回性が際立っている。ハンドリングもシャープで軽快なのだが、スタビリティ(安定性)の高さも両立しているのは「CT6」の最大の特徴だろう。主にアメリカ都心部のVIP送迎にも適したロングサイズのボディでありながら、日本の道でもなんとかなりそうな取り回し性が魅力的に思えた。

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 このCT6、実に軽量なのである。アーキテクチャーのアルミ含有率は62%に達する。軽量マテリアルを多用することで、なんと1950kgという超軽量ボディを実現しているというから驚きである。「アメ車=重量級の鉄の塊」といった、かつてのイメージはその面影すらないのだ。2トン切りはもはや、ミドルサイズのセダンでもダイエットしきれない数値である。2.5トン超は覚悟していたが、その数値を耳にして腰を抜かしかけた。

 加えて驚きなのは、1045万円というプライスタグがつけられていることだ。キャデラックはアメリカ最高峰の至宝であり、そのなかでのフラッグシップセダンでありながら、1000万円ちょっとの値付けに驚かされた。

 それでいて、ほとんどがオフプション扱いだった、というギミックもない。ほとんどすべての贅沢先進装備を標準で備えたうえでの価格が、これなのである。「フラッグシップ」を錦の御旗に、1500万円オーバーは標準的で、ともすれば2000万円から3000万円もすることのあるLクラスセダンとしては、破格のバーゲンプライスであろう。

 アメリカのミリオンスターをレッドカーペットに導くCT6を見て、それが1045万円だと思う人は、まずいないだろう。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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