温泉旅館の評価を一番大きく左右する要素とは?顧客の「ブランド経験」最大化戦略
BEMとは
近年、顧客経験やブランド経験という言葉が経営管理の実践の中に浸透し、ビジネスにおける共通ワードとして用いられるようになりました。これらのワードは、商品やサービス自体の機能・品質ではなく、それらを購入・使用する過程で顧客が得られる経験を意味します。そして顧客経験やブランド経験が重要視されつつある中、ブランド・エクスペリエンス・マネージャー(BEM)という新たな職種が注目を集めつつあります。日本語にすればブランド経験管理者ですが、いったいどのような職種なのでしょうか。
ファストファッションの米GAPにはシニアBEMというポジションがあり、顧客経験と従業員経験とを統括する仕事と位置付けられています。具体的には、ジェネラルマネージャーの指揮の下で優れた顧客サービスを提供しつつ、従業員のトレーニングを行いながら、売り上げ増加にも貢献するという幅広い仕事です。そしてブランド経験を最適化することが、BEMの責務として強調されています。
英BMWのモーターバイク部門のBEMは、イベントを円滑に運営し、成功に導くのが役割です。イベントでの顧客経験を高め、販売ディーラーへの顧客からの引き合いを多くするのが、その狙いとなっています。
米IBMには、ブランド経験担当のクリエイティブディレクターという仕事があります。このポジションの役割は、IBMブランドのクリエイティブリーダーとして、デザイン表現をあらゆる顧客とのタッチポイントにおいて統括し高めることです。このため、社内スタッフと社外スタッフの両方を率いていくことが求められます。
これらのほかにも、パソコン製造・販売の米デルや、豪通信会社オプタスなどにもBEMが設けられており、メーカー、サービス業、ITなど幅広い業種にわたって存在していることがわかります。その仕事内容もスタッフのサービス管理からコミュニケーション管理、デザイン戦略に至る幅広いものです。
BEMを設置する目的
企業によって仕事内容が多岐にわたるBEMですが、共通しているのは顧客経験、特にブランドに関する経験をより良いものとするために行われる仕事であるという点です。最終的にブランド経験を高めるため、販売スタッフのサービスやコミュニケーション活動の質を高めることが主な仕事になるのです。
では、わざわざBEMという個別のポストを設置する理由はなんでしょうか。従来のサービスマネージャーやデザインマネージャーとは異なり、「ブランド経験」という用語を用いることでBEMが達成しなければならない目標をよりはっきりと表現できます。また、ブランド経験という言葉を使うことで、それに関する業務一式を束ねることができるようになり、権限の幅が広がり、これまで権限の壁で仕切られていた業務の「サイロ」(組織の壁)を壊す効果にもつながります。