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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

温泉旅館の評価を一番大きく左右する要素とは?顧客の「ブランド経験」最大化戦略

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授

 以上からいえることは、当たり前品質については一定水準を確保すれば十分であり、一元的品質要素はできるだけ磨いて客に喜んでもらえるようにすべきだということです。課題は魅力的品質要素であり、これを持つか持たないかで大きく顧客の評価は異なってきます。したがって、何が顧客にとっての魅力的品質要素であるかを見いだすことが、最も重要なBEMの責務となるのです。
 
 日本旅館の例でいえば、最近新しくオープンする温泉旅館では、部屋の数を限って一部屋当たりの価格を高くすることが流行っているようです。こうしたラグジュアリータイプの部屋では、「部屋付きの温泉露天風呂」はまだ「魅力的品質」なのですが、近い将来「当たり前品質」に変化してしまうことが十分あり得るのです。こうしたとき、次の魅力的品質がなんであるかを追求することが旅館ブランドにとって非常に重要になります。
 
 つまり、顧客のブランド経験において、これら3つの品質要素はどれかをあらかじめ押さえておき、どこのコンタクトポイントでその品質要素が試されるかを知っておくことが重要です。逆に把握できていなければ、明確な改善目標を立てることはできません。

 狩野モデルは、BEMのなすべき仕事がどこにあるかを示唆してくれる大事な指針といえます。
(文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授)

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

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