医師の良し悪しはどこで決まるのか?
—医師専門の人材紹介サービスとは、どのようなものでしょうか?
吉池 「医師紹介会社」と一般に呼ばれますが、一般的な人材紹介会社とシステムは同じです。病院や企業などクライアントの依頼に応じて医師人材マッチングを行うビジネスで、医師側の登録は無料です。実際に転職に成功してから、医療機関側が紹介会社に報酬を支払います。報酬は医師の年収の約20~30%ですから、一般的な人材紹介会社と同じくらいですが、そもそも医師の賃金は高いので、報酬は平均300~400万円に上ります。一般の人材紹介では、平均転職者のモデル賃金が400万円程度ですから、報酬は30%としても120万円です。したがって高額報酬に惹きつけられて医師紹介業に参入する業者も増えています。
最近は東京から地方へのUターン転職や、地方から首都圏に移りたいという希望も聞きます。「当直なし」「オンコール(呼び出し)なし」などの形態を求める医師も少なくありません。このような医師の就業条件は、求人票で一律的に公募されるよりも、医療機関側と紹介会社との直接交渉でまとまることがほとんどですから、交渉力に長けた紹介会社を通じて転職する医師が有利な転職を実現できることになります。プロ野球やプロサッカー選手のエージェント(代理人)にも似た部分がありますね。
しかし、医師紹介会社の質は玉石混交であり、その質を見極めてから契約をすることが、転職する際には非常に大切です。
–医師紹介会社間の質の差が大きいということですか?
吉池 はい。転職活動は医師にとっても一生のキャリアを左右する一大イベントですが、医師紹介会社の選択に失敗をしてキャリアを駄目にする医師も珍しくありません。
例えば、福岡県のA社という紹介会社は、架空の好条件求人をサイト上に多数でっち上げ掲載することで転職希望の医師を集め、A社が手っ取り早く稼げそうな医療機関相手に、半ば強引に契約を結ばせて暴利をむさぼっていました。A社内では架空求人を掲載することを「ダミーアップ」、取り下げることを「ダミーダウン」と呼んでおり、各求人の上げ下げがシステムで意図的にできるようにされていたというから悪質です。