このように医師の活躍の場が広がっていることを受けて、医師の転職市場も活性化しているようです。医師紹介会社の批評・研究を行っている、医師紹介会社研究所の広報担当である吉池理氏に、医師の転職市場について話を聞きました。
医師の転職市場の実態は?
–医師の転職状況について教えてください。
吉池理氏(以下、吉池) 当社では医師専門転職サイトの実態を調査・評価する「医師紹介会社研究所」を運営していますが、転職市場が活性化していることは間違いありません。
メディアの影響により医師の社会的地位がさらに上がったこともありますが、医師は一生涯続けられる職業であるため、その期間をより良い条件で働くことを求めて転職するようになっていると思われます。また、医師の数は増えていますが、大都市圏における求人数は横ばいです。その一方で、地方の求人は増えており、医師の偏在が問題視されています。地方の医科大学病院では医師不足に陥っているところも少なくありません。
また現在、各大学の医学部には入学定員が設けられ、医師界全体として医師の適正数維持に努めています。医師や病院同士の過当競争を防ぐ狙いもあります。
ところが、このような守られた環境下にいる医師たちは、自らの社会的地位をより強固にするために、学校別や師事する教授ごとの派閥やグループが形成されやすい状態にあります。派閥を外れた医師のキャリア形成は難しく、常勤(=正社員)として働くことをあきらめ、非常勤(=アルバイト)としての勤務を余儀なくされるケースすら存在します。一般の人々と同じく医師にとっても、好条件の転職先は競争率が高いのです。当然ながら、医師の競争相手は医師なので、ハイレベルの争いとなります。
–常勤と非常勤では、待遇はどれほど違うのでしょうか?
吉池 非常勤は手当や保障が常勤と比較すると劣りますが、勤務形態が比較的自由で、仕事内容も軽いものが多いと思います。勤務形態が自由ですから、常勤のように早朝出勤したり、夜中や休暇中の呼び出しなどもありません。仕事内容が軽いわけですから、大きな責任を伴うこともなく、自分のペースで仕事に取り組むことが可能です。しかし、男性は常勤でないと上のポストに就くことができませんから、常勤を外された場合のキャリアを早い段階から考えておく必要性があります。最近の傾向では、男性が常勤、女性が非常勤を嘱望するケースが多く、特に女性は結婚、出産、子育てといったライフイベントに合わせて形態を変える方が多いようです。