「我が道を行く」経営戦略
継続した経営実績には、必ず裏打ちされた優れた経営戦略がある。ヨドバシの「我が道を行く」経営戦略の真骨頂はどこにあるのか。
まず大きな要因として、非上場の同族企業である点が挙げられる。藤沢昭和・現社長が1960年に創業し、当初は「街のカメラ屋さん」だった。他の大手家電量販店とは異なり、業態が大きくなってもいたずらに多店舗展開に走らず、大都市の駅近立地にこだわり、店舗数は今でも21にとどまっている。ここ3年間は新規出店をしていなかったが、7月17日、さいたま市のJRさいたま新都心駅前の商業施設「コクーン3」に、埼玉初出店となる「ヨドバシカメラさいたま新都心駅前店」を出店する。ヤマダが店舗数1000を超え、縮小に動き始めたのと対照的だ。
いたずらに店舗数を増やさないということは、社員の数を急激に増やさないということになる。ヨドバシの店員の在社平均年齢は確実に上がってきている。それは、それぞれの店員が商品知識や接客技術を蓄積していけるということだ。ヨドバシは、JCSI(日本版顧客満足度指数)で5年連続家電量販店の分野で1位となっている。店舗数拡大に走ったヤマダが「日経ビジネス」(日経BP社)の顧客満足度調査で毎年ワースト1となってしまっているのは、店舗拡大のため店員教育が追いついていないためだと推察される。99年にポイント還元制を始めたのも、ヨドバシが初めてだとされている。
「ヨドバシ.com」
そして今、ヨドバシが注目を集めているのが、以前より粛々と進めてきたIT化だ。同社では店頭のすべての商品にバーコードが付いており、スマートフォン(スマホ)などで読み取ると画面に当該商品の競合価格や在庫状況などが示される。もちろん同社のインターネット通販サイト「ヨドバシ.com」に入っていけば、店ごとの在庫状況から取り寄せに必要な時間まで掲出される。
小売業者がネット通販に参入すると、通販サイト用データと実際の在庫や店頭価格とが連動されないままのケースが多い。ヨドバシは完全に連動しているようにみえる。興味のある商品をヨドバシ.comで検索すると、売り止め商品も示されるが、その場合「後継商品を表示しますか」と示され、アマゾンとは違う「リコメンド機能」も工夫されている。
ポイント制による還元も手厚い。現金で買えば店頭価格の10%が還元されるが、クレジット機能が付いた「GOLD POINT CARD+」をつくると11%になる。現金買いより優位となるので、顧客の囲い込みには極めて有力な制度を構築した。
加えて配送の速さだ。当日6時間以内配送を、日本の人口ベースで60%を超える地域までカバーしたとしている。これはアマゾンより速い。