(4)プレゼンテーション能力を鍛え続ける
「多くの人を前にして話すのも仕事ですから、どのようにすれば参加者を引き込むことができるのか。歌舞伎役者、落語家やミュージシャンのライブで勉強しています」(同)
もちろん流暢に話せばいいものではない。セミナーでの同氏の話し方は、職場の同僚に説明するような口調だった。
「終わコン」にならないために、何を磨いていくか
一方、コンサルタントへの取材で失望したケースもあった。ある編集部からの依頼で、業界では知られたコンサル会社出身の「在職中は経営トップの右腕だった」という経営コンサルタントに話を聞いたが、得意げに話すビジネス事例の古さ、分析理論の当たり前さにがっかりしたことがある。
当人には大変失礼だが「この人は、終わったコンサルタント(終わコン)だな」と感じながら、なんとか最近の事例を引き出そうと試みたが非常に苦労した。
また、大企業在籍時に有名ブランドのコンサルティングに携わり、独立後も自分の在職中の経験だけでそのブランドを語る人もいた。取材時に資料もいただいたが、退職前の数値データまでしかなかった。調べれば最新の数値は見つかるはずだが、情報を更新する気はなかったようだ。
このように人によってさまざまだが、学生や若手社員の中にコンサルタント志望者は多い。コンサルタントという肩書は国家資格ではないので(キャリアコンサルタントの国家資格化の動きはある)、その気になれば明日からでも名乗ることができる。もちろん仕事の依頼があるかどうかは別で、第一線で活躍し続けるためには不断の努力が必要だ。
特に近年は、企業側の疑心暗鬼もある。「外部のコンサルタントに、企業風土を含めた現場の空気感がわかるのか」との思いを持つ人は多い。「以前依頼したコンサルタントに、さまざまな改善策を提案されて実行したが、成果が上がらなかった。もう頼みたいとは思わない」という声も耳にする。
そうした声に、阪本氏はこう答える。「私の提案が受け入れられないこともありますが、結局は現場感覚ではないでしょうか。私自身、小さな会社の経営者として資金繰りも行えば、顧客満足をどう高めるかに悩むこともある。そして『解』は現場にあります。相手先企業には頻繁に出向き、現場や現実を見て、相手と話し合いながら提案します」
セミナー後の懇親会では、仕事を通じて世の中に何を提供しているかの「自分ブランド」を情熱的に語る参加者も多かった。長く第一線で活躍し続けるためには、「共通言語」のわかる同志をどれだけ増やすかも大切なようだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト)