羽田空港の国内線発着枠についてANAに手厚く配分されるという報道を受け、同社の株価は反発した。羽田の発着枠は1枠で年間20~30億円の収入を生み出す美味しい利権だ。だから航空各社は羽田の発着枠を「ドル箱」と呼ぶ。
国土交通省は11月19日、年間2万回(1日25便)増える羽田空港の国内線発着枠の配分基準案を、有識者会議に提示した。過去5年間の地方路線の数や運航の安全性などを点数化し、それに応じて便数を振り分ける。
同省案の最大のポイントは、10年に経営破綻したJALについて「破綻期間中は公的支援によって運航できた(された)」と位置付け、この期間のJALの実績をゼロとしたことだ。JALが企業再生にかかった期間は約800日のため、獲得した点数の4割程度が差し引かれることになる。ANAが採点でJALを大きく上回ることが確実となった。
有識者会議では委員から「(国交省の案だとJALの)破綻期間中の努力の意味がなくなる(まったく評価されないことになる)」などの異論が続出した。委員長が「国交省の原案に賛成する人はいないのか」と発言を求めたが、誰からも手が挙がらなかった。
国交省は当初、11月19日の会合で配分基準をとりまとめる予定だったが、有識者会議のメンバーと意見調整したうえで最終案の一部を修正。年内には具体的な便数を配分する。
配分の対象となる25枠のうちスカイマーク、エア・ドウ、スカイネットアジア、スターフライヤーの新興航空4社が13枠の配分を受けるものとみられている。JAL、ANA向けは12枠。12枠の行方が焦点となる。
国交省の配分基準案ではJALが大幅に減点されるため、ANAが8~9枠を獲得することになるだろう。JALは3~4枠にとどまることになる。
JALの評価半減案が、有識者会議の議論を反映しない形で唐突に示されたため「政権交代を間近に控え、JALの再上場に批判的な自民党に、国交省が早くも秋波を送った」との見方が出た。羽田空港発着枠の争奪戦は、民主党と自民党との“政界代理戦争”の側面が大きかったからでもある。
民主党シンパとして知られる稲盛和夫・名誉会長の下、公的資金投入を受けてピカピカの優良企業としてスピード再上場を果たしたJALは、民主党政権の数少ない政治的“手柄”と評価されている。これが面白くない自民党はJALへの手厚い公的支援に、批判的な姿勢をとり続けてきた。