それが、CASEだ。Cはインターネット空間との接続(Connected)、Aは自動運転(Autonomous)、Sはシェアリングなどのサービス(Shared&Services)、Eは電動化(Electric)をさす。すでに中国では温室効果ガスの排出を抑え人々の健康を守るために、電気自動車の導入が重視されている。
ルノーはCASE分野での技術力に不安があるといわれている。つまり、ルノーが環境の変化に適応して持続的な成長を目指すためには、CASEに関する要素を取り込まなければならない。そのために、フランス政府はゴーンにルノー・日産・三菱アライアンスの運営をゆだね、統合の実現を追求した。
やや譲歩を示し始めたフランス政府
ゴーン氏の捜査が進むにつれ、フランス世論からも同氏への批判が強まった。この状況のなかでフランス政府はすぐに経営統合を求めるのではなく、アライアンス体制の維持を通した日産とルノーの関係強化を重視するように見える。
この方針転換は、株主総会を控えるなかでのルノーと日産のやり取りを見るとよくわかる。今回の株主総会において日産は、指名委員会等設置会社への移行を目指した。この議案は定款変更であり、特別決議に該当する。特別決議では、議決権ベースで50%超の株主が出席した上で3分の2以上の賛成が必要だ。
当初、ルノーは自社の役員が要職に就いていないことを不服とし、投票の棄権を仄めかした。しかし、ルノーは棄権しなかった。日産がルノーに譲歩し、指名委員会にジャンドミニク・スナール会長、監査委員会にティエリー・ボロレCEOを迎え入れたからだ。
資本の論理に基づけば、日産がルノーの意向に配慮するのは避けられない。日産は最低限の譲歩でルノーをなだめられたともいえる。特に、指名委員会の委員長には経済産業省OBが就任した。ある意味、日産はルノーの意向が強くなりすぎないよう、くさびを打つことができたといえる。また、ルノーは日産の取締役人事にも賛成した。
加えて、フランス政府はルノー株の保有を減らす可能性に言及し始めた。ルノーとイタリアのFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との経営統合交渉が破談になったこともあり、フランス政府は日産との良好な関係を維持しなければならない。ルノーのスナール会長も、資本関係について日産と対話する可能性を示している。