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ルノー=フランス政府vs日産=日本政府、抗争長期化の真相…国の経済を懸けた戦い

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 フランス政府とルノー日産に対する圧力は低下している。重要なことは、ルノーと日産の良好な関係を維持することだ。もし、フランス政府がルノーと日産の経営統合を強引に推し進めれば、日産の“心”はルノーからさらに離れるだろう。具体的には、日産のモノづくりを支えてきたエンジニアなどが組織を離れ、日産の強みそのものが大きく低下する展開も否定はできない。

“粘り強く改革を貫徹する”経営の重要性

 日産が今回の株主総会において新しいガバナンス体制を確立できたことは重要だ。これによって、従来よりも経営の意思決定に関する透明性を確保することはできるだろう。それは、日産が株主などの利害関係者に説明責任を果たすために欠かせない。

 同時に、日産は長期的な視点をもって、粘り強く、あきらめずにルノーとの交渉を進めなければならない。なぜなら、ルノーが経営統合という最終的な目標をあきらめたわけではないと考えられるからだ。時間が経過するに伴い、フランス政府の意向も絡みつつ、ルノーは日産の経営に介入しようとする可能性がある。

 特に、業績が悪化した際など、ルノーが日産経営陣の手腕を批判し、自社を中心とした経営の意思決定を目指すべきであると主張を強めることが考えられる。その場合、日産がどれだけの株主、その他のステークホルダーからの支持を取りつけられるか、現時点ではなんともいえない。

 日産に求められるのは、トップが忍耐強くルノーとの関係改善と維持に取り組むことだ。そのためには、本業の強さを高めなければならない。電気自動車をはじめとする新しいモビリティーを同社が生み出し、ルノー以上の存在感を世界に示すことが求められる。それができれば、一方的にルノーが経営統合を求めることがあったとしても、日産はより多くの味方を獲得し、自社の主張への賛同を得ることができるだろう。

 本業の強化に向けた取り組みを進めると同時に、日産トップはフランス政府の意向をうまく汲み取り、ルノーとの関係を強化してプラットフォームの共通化の推進などを通したコストのさらなる削減など、実利を得ることにこだわるべきだ。

 日産トップには、この考えを実践していくことが求められる。加えて、日産には、長期戦を想定して忍耐強くルノーとの交渉に臨むために、その考えを引き継ぐことのできる後継者を確保しておくことも重要だ。それが、アライアンスを維持しつつ、日産が経営の独立性を確保していくために不可欠と考える。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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