世界的に著名なスイスのビジネススクール「IMD」は、1989年から「世界競争力ランキング」を発表している。今年は5月28日に発表され、これを踏まえ翌29日にフィリピン・マカティにあるビジネススクール「AIM」で、「フィリピンの競争力」に関するカンファレンスが開催され、筆者も出席した。発表の翌日にカンファレンスが開催されるという驚異的なスピード感は、アジア屈指のビジネススクールであるAIMとIMDとの良好な関係により実現している。
世界競争力ランキングは、どのように決定されるのか。まず、使用されるデータは61%が統計データ、残りの39%はグローバル企業の経営陣への意識調査となっている。今年は6100人のエグゼクティブを対象に調査が実施されている。
評価項目は大きく「経済のパフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4つのポイントから構成されている。
2019年のフィリピンの世界競争力は46位という結果であった。今回調査対象になっている国は63カ国ゆえ、深刻に捉えるべき事態と思われるが、和やかな雰囲気で始まった。昨年の50位よりランクアップしていることに加え、楽天的なフィリピン人の特性が影響しているのかもしれない。
評価内容に注目すると、労働市場(10位)、国内経済(12位)、税制(14位)などは上位にあるものの、基礎的インフラ(61位)、教育(58位)、貿易(54位)などは極めて深刻な事態となっている。
確かに、道路などの交通事情は極めて悪く、たとえばグーグルマップで目的地までの到着時間を調べると「45分~2時間30分」などと表示され、まったく時間が読めない状況である。マニラでは、「1日に2つのアポイントメントを入れてはいけない」と、よく言われている。
しかしながら、教育に関しては、マニラの街中には大学が数多く点在し、筆者の知り合いでも、富裕層ではないものの必死に子供を大学に通わせようとしている人が多く、もっと上位に位置していると思っていた。ちなみに、フィリピンの大学進学率は35%程度である。