–今後、同業他社は出てくると予想されますか?
岩崎 出てくると思います。もともと、電力各社は自社の料金プラン比較を行っています。「全電力会社のプランを比較できる」というのがエネチェンジの特徴なので、そういう意味では追随する他社も出てくるでしょう。お客様も全国に広がるので、地域ごとにどういった差が出てくるのか、研究開発投資なども進めています。
有田 弊社には、元東京電力執行役員の巻口守男副社長や、ケンブリッジ大学の電力自由化研究チームなど、電力のプロたちが集結しています。また、海外事例のノウハウやサービスの先行優位性を生かし、ほぼすべての電力会社や関係省庁などと電力自由化に向けて具体的な協議をしている唯一の事業者だと思います。海外を見ると、公平性を欠いた電気料金比較サイトが、消費者の信頼を損ない、国全体の電力自由化を失敗させた事例もあります。そのため、今後出てくる競合他社を意識しすぎることなく、日本の電力自由化を健全に浸透させる役割をまっとうする志を持ち、事業運営に励みたいと思っています。
乗り換え件数は初年度100万件を目標
–今後、電力小売り全面自由化までのプロセスに関して、どのように考えていますか?
岩崎 サービスについて、まずは電気料金プランの比較が中心ですが、ガスや携帯電話とのセット割引など、既存の電力会社もさまざまな割引プランを検討しているので、そうした点もきちんと比較できるように準備しないといけません。自由化によって、メジャーな電力会社だけでなく、地域固有の電力事業者など新規参入組も多く出てきます。公平中立をうたうのであれば、そうした会社についても比較できるように料金プランをタイムリーに拾い上げるなど、地道な努力で準備を急がないといけないと思っています。
–乗り換え件数について、当面の目標はどれぐらいでしょうか?
有田 初年度で約100万件程度を目標にしています。
–件数は、年々増やしていく考えでしょうか?
岩崎 はい。私たちは、ユーザーに近い場所でサービスを展開するITベンチャーとして、市場に浸透するムーブメントを作りたいと思っています。単純に電気料金が安くなったり、高くなったりすることだけではなく、自由化によって暮らしが変わり、世の中の仕組みも変わったりします。まさに、そこが重要なポイントです。当社のような会社が参入して日本経済の活性化につながり、またはアジア市場などの自由化にもつながっていけば、日本だけでなくアジアを電力自由化先進地域に変えることもできるのではないかと思っています。
(構成=中原宏実/経済ジャーナリスト)
【エネチェンジ株式会社】
2015年4月設立。資本金2億2000万円(資本準備金含む)。本社は東京都墨田区太平4-1-3
【岩崎辰之氏】
1990年 有限会社エプコ設立、代表取締役社長就任
1992年 株式会社エプコに改組
2002年 ジャスダック市場に上場
2013年 ケンブリッジエナジーデータラボ設立、CEO就任
2015年 エネチェンジ株式会社取締役会長就任
【有田一平氏】
2007年 早稲田大学大学院理工学研究科修了、JPモルガン証券入社
2012年 グリー株式会社入社
2013年 ケンブリッジエナジーデータラボ入社(共同創業者)
2015年 エネチェンジ株式会社設立、代表取締役社長就任