倒産続出、75%が赤字、植物工場でビジネスは無理?放射能汚染地や昭和基地が適地?
植物工場は、都市の限られた空間で効率良く野菜生産ができるという意味で、究極の都市農業なのかもしれない。しかし、高コストに加え、栽培方法が確立されず、普通の野菜との差別化も曖昧という三重苦に悩んでいる。
今年1月の「起きるべくして起きた」、また6月末の「起きるはずがないのに起きた」2つの倒産劇から、植物工場の悩める姿が見えてくる。我々は、野菜の未来を植物工場に託すことができるのだろうか。
「起きるべくして起きた」倒産
1月初旬、東日本大震災の復興のシンボルと期待された、宮城県仙台市の被災農家3人による植物工場経営の「さんいちファーム」(2011年11月設立)が、約1億3200万円の負債を抱えて倒産した。【編注1】
同ファームでは、植物工場建設などの資金である約3億5000万円のうち、約7割が補助金(2億5200万円=国1億6800円+県8400万円)だった。しかし、農家3人には、通常の畑での野菜栽培の知識・経験はあっても、植物工場で行う水耕栽培のそれはない。同ファームは施設や設備などのハード面は豪華で、特に水耕栽培装置は根の水温を調整するだけの最新型だった。しかし、メーカーからの技術指導は不十分であり、経営に必要なソフト面が伴っていなかった。
その結果、安定した温度調節ができずに発育不良障害が多発し、取引先の注文に応じきれず、赤字が累積して再建を断念したという。これは、大きい花火を打ち上げて復興への希望を燃え上がらせただけの「補助金蕩尽型の瞬間芸」である。現場に植物工場経営に関するノウハウが皆無で、「起きるべくして起きた倒産」の典型例といっていいだろう。
「起きるはずがないのに起きた」倒産
一方、以下の倒産については「まさか」と受け止めた業界関係者も多かったのではないだろうか。
6月末、第三次植物工場ブームを牽引するトップ集団の農業ベンチャー・みらいが東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請して倒産した。帝国データバンクによれば、負債額は約10億9200万円だという。【編注2】
同社は04年、植物工場・水耕栽培装置の研究開発と、植物工場での野菜生産・販売を目的に設立された。【編注3】
創業者の嶋村茂治元社長は千葉大学大学院で蔬菜園芸学を専攻し、大手企業との共同開発などを経て、大学発ベンチャーとしてみらいを設立した。
設立後、水耕栽培装置を全国の10都道府県12カ所に導入し、07年には南極の昭和基地に栽培技術システムを提供した。13年にはモンゴルに現地法人を設立して植物工場を稼働させるなど、実績を積みながら話題性も提供し、業界の広告塔的役割を果たしてきた。