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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

倒産続出、75%が赤字、植物工場でビジネスは無理?放射能汚染地や昭和基地が適地?

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 その間の09年、農林水産省と経済産業省の共同プロジェクト「農商工連携研究会植物工場ワーキンググループ」が立ち上げられた。これを機に、千葉大学を拠点に9つのコンソーシアム(企業連合)が形成され、植物工場の第三次ブーム勃発のきっかけとなった。

 その際、同社はその中のひとつである「低コスト未来型人工光利用植物工場」コンソーシアムのリーダーになり、当時の麻生太郎首相が同社を視察に訪れたこともある。

 昨年6月、みらいの2つの植物工場が本格的に稼働した。ひとつは、経産省の補助事業として建設され、先のさんいちファーム同様に東日本大震災の復興のシンボルとなった、宮城県多賀城市の「みやぎ復興パーク」内のものだ。全面的にLED照明採用の植物工場としては世界最大規模で、日産1万株のレタスが収穫可能だ。

 もうひとつが、千葉大学の植物工場部門の拠点である環境健康フィールド科学センター近くに建設された「柏の葉第2グリーンルーム」だ。こちらも、レタスなど日産1万株を誇る。

 みらいは、この2つの工場の稼働で足場を築き、産官学の期待を背に、未来の都市農業に向かって大きく羽ばたこうとしていた。しかし、その矢先の倒産劇である。

 帝国データバンクによると、同社は業容拡大を見越して前述のように14年中に2工場を増設したが、野菜の生産が当初の予定通りに安定せず、売り上げが想定を下回り、大幅な営業赤字を計上した。【編注4】

 そして、設備投資資金などの返済期限が迫り、6月末の決済資金のめどが立たずに倒産した。順風満帆のはずの同社に、何が起きたのだろうか。残念ながら、詳細は不明だが、あらためて同社の会社概要を見ると実に興味深い。例えば、以下のような文言が並んでいる。

「弊社代表の嶋村茂治は、日本を代表する植物工場の研究者」

「世界最先端の科学技術によって、進化し続ける株式会社みらい」

「みらいの植物工場は、構造、機能、栽培システム、栽培ソフト、衛生管理、これらの技術をすべて自社開発しました」

「植物の生育に必要な温度・光・水・養分などの環境を、最適に制御して栽培することを可能にした施設です」

 それならば、「野菜の生産が当初の予定通りに安定しなかった」という事態は起こり得なかったはずだが……。

 もちろん、情報が少ない中で速断はできない。しかし、さんいちファームのような幼稚園児クラスも、みらいのようなベテランの大学教授クラスも失敗してしまうのが、植物工場ということだろう。

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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