「特別価格」「店頭価格から10%OFF」――。街頭で、このような文言が載ったコンタクトレンズのチラシを配る販売員を見かけることがある。商品の価格が具体的に表記されていないのはメーカーによる圧力が背景にあるとの疑いから、公正取引委員会は6月11日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで大手3社への立ち入り調査を始めた。
立ち入り調査を受けたのは、日本アルコン、クーパービジョン・ジャパン、シードの3社。3社は数年前から大手小売店に対し、インターネット上での通信販売やチラシに小売価格を明示することを制限した疑いがある。従わない業者には出荷停止などをほのめかしていたとされる。しかも、書面などの明文化を避け、口頭で働きかけていた、と関係者は証言している。
独禁法では、取引先の販売方法や宣伝方法などを不当に制限する行為を「拘束条件付き取引」として禁止している。違反が認定されれば排除命令の対象となる。
使い捨てタイプのコンタクトは、片眼1カ月分1000~3000円で販売されている。小売店同士の価格競争を防ぐことで卸値が下がらないようにする狙いがあるとみられる。
コンタクトレンズ業界では2002年、シェア1位のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人が、使い捨てレンズのネット販売を小売業者に認めなかった行為が独禁法違反にあたる恐れがあるとして警告を受けた。10年にも製品一覧表で、特定の商品に「店頭以外で価格表示をしないように」と書き添え販売店に伝達した疑いで公取委から立ち入り調査を受け、再発防止を求める排除措置命令が出された。
J&Jが排除措置命令を受けた前後から、価格表示制限の実態をペーパーに残さないルールが出来上がった、とされている。最近では「文書なし、慣習というかたちでの指示が定着した」(関係者)という。違法性を認識し、発覚を避けながら働きかけが続いていた可能性がある。
海外勢が一時、国内シェアの63%を占める
コンタクトレンズは平成のロングセラー商品である。メガネよりも自然に近い見え方をすることや美容の観点から、コンタクトレンズは若い女性を中心に広く受け入れられてきた。最近では、目の色や形を変えるファッション・アイテムとしても使われている。
日本コンタクトレンズ協会のホームページによると、コンタクトレンズとそのケア用品の国内市場規模(出荷額ベース)は2018年時点で2657億円(正会員39社対象)。
09年時点では2048億円(同25社)。世界市場の規模は1兆円とされているから、日本の市場規模は世界シェアの25%相当だ。米国に次ぐ世界2位のコンタクトレンズ“王国”なのである。