料理レシピサイトを運営するクックパッドの株価が冴えない。2019年4月5日の終値は268円で、株式上場以来の最高値2880円(15年8月17日)から10分の1以下まで下落した。料理レシピを投稿・検索できるユニークなサービスでブルーオーシャンを謳歌していたはずのクックパッドに何が起きているのだろうか。
クックパッドの苦境の大きな原因はユーザー数の減少だ。16年の第4四半期、クックパッドの月平均利用者数は6414万人だったが、18年は5462万人と2年間で月間利用者数が1000万人近く減少している。
これは、レシピを動画で解説する他サイトの躍進によるところが大きい。エブリーの「デリッシュキッチン」、delyの「クラシル」は、それぞれ15年、16年にレシピ動画サービスを開始。両社ともにアプリのダウンロード数はすでに1000万を超えている。
当然、クックパッドも成長するレシピ動画事業に参入。16年11月に「cookpadTV」をスタートしたが、デリッシュキッチンやクラシルとの差はなかなか埋まらない。
「レシピ系の動画サービスは、後追いになるほど不利になる傾向にあります。お気に入りに保存したレシピが増えたり、アプリの利用が習慣化したりすることで、一度使い始めるとほかのサービスに乗り換えにくくなるからです。デリッシュキッチンやクラシルはすでに一定のユーザーを獲得しており、それから1年ほど遅れて参入したcookpadTVは遅きに失した感があります」
こう語るのは、ITビジネスや最新テクノロジーに関する本を多数手がけてきた編集者の久保田大海氏だ。
「10年代前半のクックパッドは、楽天レシピやYahoo!レシピが競合相手でした。当時はレシピ数が多いサイトの質が高いと評価されており、検索エンジンの順位も上位に表示されていたので、圧倒的なレシピ数を誇るクックパッドの牙城は揺るがなかったんです」(久保田氏)
しかし、その「圧倒的なレシピ数」そのものが徐々にユーザーから敬遠されていったという。
「クックパッドには『肉じゃが』だけで1万を超えるレシピが掲載されていますが、スマホのアプリではこれほどの数が必要だとは思えません。ここ数年で単身世帯や共働き世帯がさらに増加して、能動的に料理をする人よりも受動的に料理をしなければならない人が増えています。そうした環境で、テンポよく編集された動画で『これなら私でもつくれそう』と料理を前向きに捉えられるものが求められているんです」(同)
労働政策研究・研修機構の調査では、クックパッドが創業された1997年は専業主婦世帯が921万、共働き世帯が949万だったが、2017年には専業主婦世帯は641万、共働き世帯は1188万となっている。料理に費やす時間も減っていることは想像に難くない。
「そこで、クラシルやデリッシュキッチンなどはレシピを厳選して動画のクオリティを上げることで、より伝わりやすくすることに注力しました。さらに、レシピ数よりもアクティブユーザー数を重視しており、まずはアプリをダウンロードして使ってもらうことを目指したんです」(同)