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東芝がこうした先進的な経営体制の確立に着手したのは、西室泰三相談役(現日本郵政社長)が社長の時代だった。西室氏は、キヤノンの御手洗冨士夫氏が経団連会長だった時、その後継として東芝の西田氏(当時は経団連副会長)を推薦し根回しした。だが、財界には経済団体トップの座を同じ企業の出身者が占めないという不文律がある。当時、東芝社長を務めた岡村正氏(現相談役)が日本商工会議所の会頭を務めていた。岡村氏が辞めない限り、西田氏は経団連会長になれない。この時は情報戦が仕掛けられ、「岡村重病説」がマスコミに流れた。「腰痛(脊椎の病気)で入院中。日商会頭の仕事に耐えられないので、近々、辞任する」という内容だった。
岡村氏は断固として辞任を拒否し、日商会頭を続けた。これで西田経団連会長は幻となり、住友化学の米倉弘昌氏が経団連会長になった。ちなみに岡村氏は、米倉氏が経団連会長になったのを見届けて日商会頭を辞任している。
西室氏は現在も東芝の相談役を務めており、社内に部屋があり、経営にも口出ししている。その影響力は強く、今回の室町氏の社長兼務も実質的には西室氏が決めたといわれている。
「7月初め、室町氏は日本郵政に西室社長を訪ねた。『会長として責任をとって辞めたい』と訴えると、西室氏は『君が中心になって立て直してほしい』と諭した」(7月22日付日本経済新聞より)
機能不全を起こしていたことが白日の下にさらされた、東芝のコーポレートガバナンス。その整備を国内でいち早く取り入れようとした西室氏が、皮肉にもその立て直し役を選ぶ結果となった。早くも「西室氏と西田氏の影響力を拭えぬ室町氏がトップに残ったまま、果たして東芝が再生への道を歩めるのか」(市場筋)との見方が広まっている。
(文=編集部)
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