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舘内端「クルマの危機と未来」

自動車メーカーに忍び寄る“重大な危機”?エンジン車もハイブリッド車も走れなくなる日

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
自動車メーカーに忍び寄る“重大な危機”?エンジン車もハイブリッド車も走れなくなる日の画像1「Thinkstock」より

 EUは、極めて強力に二酸化炭素(CO2)削減計画を進めている。地球温暖化防止の目標のひとつが、18世紀に始まった産業革命前の地球の平均気温に対してプラス2度以内に収めることだ。この目標を達成するためには、空気中のCO2濃度を450ppm以下に抑えなければならず、CO2排出量は現行の半分にする必要がある。先進国は途上国に比べて排出量が多いので、80%以上の削減が必要だ。

 こうした状況に対して、環境大国のドイツは2020年までに1990年比40%、50年までには同95%というCO2削減計画を打ち出している。またスウェーデンは20年に同40%削減し、50年には排出量をゼロにするという。

 当然、全排出量の20%前後を占める自動車のCO2削減もターゲットである。日本ではとても考えられないようなCO2排出規制が実施されるのである。

 例えば、現在はタイヤ等の装備も含めて120g/kmの規制値は、20年には95g/km以下へと強まり、さらに25年には70g/km前後の規制案が浮上している。つけ加えれば、20年になったら95g/kmにすればよいというものではなく、年ごとに削減しなければならない。15年の規制基準値に対し、規制初年度の12年に65%、13年に75%、14年に80%の達成が義務化されていた。

 ちなみに95g/kmをガソリン車で燃費に換算すると、リッター24.4kmである。ディーゼル車の場合は、燃料の軽油の炭素量が多いのでリッター27.5kmである。

 ただし、これはEUの測定モードの場合だ。それよりも緩い日本のJC08モードでは、さらに高い燃費を出さなければならない。JC08ではおそらくガソリン車でリッター30km、ディーゼルでリッター34kmほどではないだろうか。

 しかも、この値は当該自動車メーカーが販売した自動車の台数を勘案した上での平均値である。その上、15年の規制では平均値が1gオーバーすると1台当たり95ユーロの罰金が科せられる。当該自動車メーカーが払う罰金は、これに販売台数を乗じた金額となる。場合によっては数千億円の罰金もあり得る。さらにこれは10年後や20年後ではなく、5年後の話であり、年々確実にCO2排出量を減らさなければならない。

 では、自動車メーカーは、どうすればいいのか。いかに燃費の良いエコカーをつくっても、売れなければメーカー平均値は下がらないから、売れるエコカーを開発する必要がある。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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