行き詰まったエンジン車
日本の場合は、カタログの燃費が良ければ購入動機が強まるが、ヨーロッパではそうではない。しっかりと高速道路を走る走行性能と安定性が求められる。つまり、名前だけの燃費カーでは話にならない。
しっかりと走って、しかも燃費の良いことが求められるようなマーケットでは、本物であることが求められる。しかし、そんな自動車が存在するのだろうか。
残念ながら、これまでの自動車では達成は困難だ。
例えば、電気的な補助のないエンジン車では、CO2を削減するほどにパワーが低下し、排ガスが増えてしまう。そこで登場したのが、排気量を減らして小さなエンジンとし、パワーが減った分をターボチャージャーで補うダウンサイジング・ターボだ。ヨーロッパ勢は独フォルクスワーゲン(VW)を筆頭に、ほとんどのメーカーが一斉にダウンサイジング・ターボ化を進めた。ただし、これも最近になって排気ガスの中に有害なPM2.5が多く含まれることが判明するなど、先行きに暗雲が漂っている。
ヨーロッパにおける最初のCO2削減策は、ディーゼルエンジンの活用であった。だが、排ガス規制が間に合わず、現在ではヨーロッパの主要都市のほとんどが北京並みの排ガスによる大気汚染で悩んでいる。
このように、エンジン車は燃料がバイオ燃料であっても、PM2.5を捕捉できるフィルターを開発し、装備しなければならなくなるだろう。そうなればコストは当然、高くなる。
ではハイブリッド車はどうだろうか。これも同じエンジン車であり、同じ排ガスの課題を抱えている。また、ダウンサイジング・ターボに比べると、パワーが少なく、エンジンのフィーリングも悪く、ヨーロッパのユーザーには不人気である。
以上のパワープラントでは、どうやら20年の95g/kmという厳しいCO2規制に対応できそうにもないことがわかってきた。そこに救世主として現れたのが、プラグイン・ハイブリッド車なのだ。
プラグイン・ハイブリッドが救世主たる理由については、次回詳しく見ていきたい。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)