不祥事続出のイオングループ
実は、イオングループではほかにもさまざまな問題が起きている。
イオン子会社のイオンペットは今年4月、ペットの預かりサービスで「屋外で散歩をさせる」と宣伝しながら実際にはしていないケースがあったとして、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして再発防止の措置命令を受けた。
17年には、イオン子会社のイオンライフが、葬儀サービスについて新聞広告で「追加料金不要」と宣伝しながら実際には別料金がかかるケースがあったとして、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止命令を受けている。
イオンペットとイオンライフの件は、どちらも消費者を欺く行為で非常に悪質だ。「うっかり」では済まされないだろう。イオンは「お客様第一」を謳っているが、「お客さま第一」どころか「お客様軽視」も甚だしい。
このように、イオンではグループ会社で不祥事が繰り返し起きている。イオンは傘下企業のコントロールができていないと言わざるを得ない。ガバナンスに大きな問題があると言えるだろう。
イオンは前身のジャスコ誕生から50年を迎えた。これまで積極的なM&A(合併・買収)を実施し、数多くの企業を傘下に収めてきた。その数は、国内外でおよそ300にもなる。年間の営業収益は8兆円を超え、国内小売り最大手の地位に登り詰めた。
これほどまでに膨張した組織を管理することは簡単なことではないのかもしれない。だが、消費者にしてみればそれは関係のないことだ。
一連の不祥事により、「イオンは怪しい会計処理をしている」「イオンはブラック企業」「イオンの広告は信用できない」との印象を与え、イオンのイメージ悪化につながっていることは否めない。このことが主力のスーパーにも影響を及ぼしかねない。そうなればスーパーの立て直しはおぼつかない。
もっとも、イオンのスーパーのブランド力は、今も高いものがある。調査会社のニールセンカンパニーが18年に実施した調査によると、GMSと食品スーパーにおけるブランド力は、国内の全地域でイオンが1位だったという。イオンのブランド力は多少の不祥事では揺るがないのかもしれない。
とはいえ、同調査では、どの地域にもイオンを脅かす強力なスーパーが存在し、「ヨークベニマル」や「オーケー」など複数のスーパーの顧客定着率はイオンを上回っているといい、イオンはうかうかしていられない。今後、さらなる不祥事が起きてしまえば、イオンのブランド力は低下し、傘下スーパーの顧客離れが加速しかねない。
イオンは巨大な企業集団に成長した。業界の盟主に君臨し権勢を振るっているわけだが、一方でガバナンスに緩みが生じており、そのことがいずれ致命的な問題を起こさないとも限らない。そうなる前に、ガバナンスの緩みを是正するための抜本的な対策を講じるべきだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。