あの企業がついに債務超過で上場廃止寸前!“奥の手”でギリギリの危機回避か
2014年9月期末に債務超過となり上場基準に抵触し、上場取り消しの瀬戸際に追い込まれていた東証2部上場のピクセラが、債務超過解消にメドをつけ上場を維持する見通しとなった。同じく東証2部上場の投資会社Oakキャピタルに対して、8月3日付で総額3億円の増資(1株100円)とさらに総額11億1177万円(行使価格1株100円)の新株予約権発行を決めたことで、この取得資金で債務超過が解消できる見通しとなったのだ。これにともない100円前後だったピクセラの株価は200円以上をつけるなど、倍以上に一気に急騰した。
さらに新規事業を展開していくことも明らかにしたため、株価急騰はその期待感を反映したものと思われるが、実際にはまだ不透明な要素もある。
とりあえず債務超過は解消
そもそもピクセラは、14年9月期まで3期連続の欠損。同期末時点で1億1100万円の債務超過となり上場基準に抵触し、1年後の今年9月末までに債務超過を解消しないと上場廃止となる事態に陥っていた。
そのためピクセラは、14年12月には総額1億2000万円の増資を実施したものの、これで一気に債務超過解消とはならず、今年3月末時点でもまだ4900万円の債務超過状態だった。残りは15年9月期の利益確保により解消するという計画だったが、この肝心の業績予想を今年7月に下方修正した。期初には通期で1億3000万円の最終黒字を予想していたが、2000万円に下方修正。これでは債務超過解消には足りないため、なんらかの施策が必要な状況となっていた。
こうしたなかで、今回の増資と新株予約権発行が決まった。ただ、本当に今期業績が4年ぶりの黒字確保を果たすかは極めて流動的。加えて、昨年4月に発行した社債4億円弱について、この8月から分割で繰り上げ償還することも同時に決まっており、資金面では一気に余裕ができたというわけには到底いかない。なお、社債の前倒し償還は今年8月から毎月1600万円余、ほぼ向こう2年間となっている。
増資資金3億円でとりあえず債務超過は解消する見通しだが、来期になってさらに資金は不足する事態になることも想定され、新株予約権の行使は当然ながらOakキャピタル側にあるが、資金が不足すればピクセラ側から行使を依頼する状況もあり得るだろう。
過去には業績急拡大と急降下も
そもそもピクセラという会社は、開発型のメーカーである。MPEG技術を使ったテレビキャプチャー、テレビ用デジタルチューナー、そして液晶テレビなどへと製品展開を続けてきた。製品は自社では開発のみを行うファブレスで、実際の製造は外部に委託している。
1982年に堺システム開発として創業し、97年に現社名に改称、02年12月に東証マザーズへ上場し、さらに04年9月にはマザーズから東証1部に上場。そして債務超過により今年から東証2部となっている。
過年度の業績でみると、液晶テレビで躍進した時期もあった。09年末に液晶テレビ市場に再参入したことにより10年9月期は売上高が対前期比で2.3倍、利益も実に6年ぶりに黒字を確保するという大躍進を遂げ、続く11年9月期も売上高が対前期比35%増、利益も引き続き黒字確保で2ケタ増益を達成する続伸経過だった。
しかし、液晶テレビ市場の反転からその後低迷、12年9月期から14年同期まで3期連続欠損で、11年9月期には157億円あった売上高も14年9月期には30億円にまで減少している。
なお、14年9月期は売上高が30億1200万円、最終欠損が4億9200万円、期末の債務超過額は前述のように1億1100万円。15年9月期は期初に売上高44億3500万円、当期利益は1億3000万円を予想していたが、今年7月にこれを売上高34億4500万円、当期利益2000万円に下方修正した。
依然として4年ぶりの黒字回復予想ではあるが、営業段階では赤字で、子会社の株式売却益を特別利益で見込むかたちとなっている。子会社の売却は売り上げの目減りにもつながり、黒字会社だったため利益の目減りともなるが、「背に腹は代えられない」状況だ。
今後の事業面では、既存のネットワークテレビチューナー組込技術を生かしたIoT(Internet of Things)関連事業、自動多言語翻訳システム事業、AR/VR事業などへの展開を図る考え。いずれも実績はまだないが、これまでの技術を生かして開発は進めており、それぞれ試作品レベルでは製品化している。新株予約権行使による資金などをベースに、事業化を目指す。ちなみにAR/VRとは「Augmented Reality・Virtual Reality」を指し、コンピュータグラフィックスや音響効果を組み合わせ、3D-CGなどで人工的に現実感をつくり出す技術のこと。
ただ、いずれも他社が注目するマーケットであり、競争は避けられない。新規事業展開には新株予約権の行使による取得資金を充てる予定だが、この行使は相手も投資会社であり、実際の株価と連動してどのタイミングで行われるかは予測がつかない。当面の上場維持はほぼ間違いないが、依然として目が離せない状況は続く。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)