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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

クラウドファンディングによる資金調達が一般化…銀行融資に頼らずビジネス化に成功

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

求められるマーケティングセンスは企業活動と一緒

 ここまでがクラウドファンディングについての簡単な説明となるが、それを利用することによって、マーケティング的にどのような効果があるのだろうか。

「まずあげられるのは、スモールビジネスの可能性を広げられるということです。ユニークなアイデアを商品化したくても銀行からの融資が受けられない個人や企業は、クラウドファンディングによって実現できることもあります。

 例えば、大阪の家電メーカーのライソンがペヤングソース焼きそばを焼くための専用ホットプレートを企画したところ見事にプロジェクトを達成しました。海外では、タイプライター風キーボード『PENNA』や、水を入れるとジュースのようなフレーバーを感じる『The Right Cup』といったものが実際に商品化されています。面白いアイデアを持っている人にとっては、実現の近道となるシステムであることは間違いないでしょう。

 さらに、3Dプリンターの普及で試作品の製作が安価で短時間でできるようになり、完成品のイメージを伝えやすい環境が整ってきました。実行者がプロジェクトのゴールを具体的に伝えやすくなった点も、クラウドファンディングに対して追い風になっています」(同)

 だが、いくら銀行の融資よりも資金調達のハードルが低いとはいえ、なんでもかんでもプロジェクトが成立するわけではない。

「企業のつまらない商品にたくさん広告を打っても売れないのと同様に、クラウドファンディングもしっかりとコンセプトメイキングをしなくてはいけません。つまり、市場や顧客をしっかりと分析して、独りよがりではなく他者にも有益であることをメッセージとして訴える必要があります。その意味では、ビジネスやマーケティングで求められるセンスと変わりません。新たなアイデアに少ないリスクで事業化の機会を与えられるクラウドファンディングは、今後のベンチャー支援には有効な手段であるといえるでしょう。また、それと同時に、個人でも企業でも事業化のためには、他者にやりたいことの魅力を伝えることができるマーケティングセンスを磨く必要のある時代に入ったと思います」(同)

 一方で、ブームにかこつけてクラウドファンディング実行者をそそのかすコンサルタントも少なくなく、しっかりとしたビジョンがないとアイデアの実現どころか金儲けに利用されてしまうことさえある。アイデアを形にするなら、プロセスと結果をより明確にしておかなければならないのは、企業案件と何も変わらないという認識を実行者は持っておくべきだろう。

(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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