小泉純一郎、細川護熙両元首相が2014年の東京都知事選で、原子力発電を「トイレなきマンション」になぞらえて「原発ゼロ」を訴えたのは記憶に新しい。両氏は原発で燃やした後の使用済み核燃料を再処理した際に出る高レベルの放射性廃液の処分問題が、日本ではまだほとんど解決していないことを指摘したのだ。
残土や汚泥、廃材からの放射性廃棄物とは比べものにならないくらい高レベルの放射性廃棄物である。使用済み核燃料の再処理で発生する「ゴミ」の始末に道筋がついていない以上、原発を続けるのは無責任で、自然エネルギーや省エネを生かした循環型社会を目指すべきだ、という主張だ。
この発言を契機に、高レベル放射性廃棄物の「トイレ」づくりに向けた動きが加速したと言っても言いすぎではない。これまでの原発により使用済み核燃料がすでに発生しており、原発をゼロにしても、すでに発生した使用済み核燃料を処分しなければならない。したがって、将来的に原発を進める、進めないにかかわらず、廃棄物の後始末は避けて通ることはできない問題だ。
核燃料サイクル維持策を検討
現在、経済産業省は原子力事業の環境整備をする目的で、核燃料サイクル維持策の検討を始めている。核燃料サイクルとは、原発から出る使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを、再び燃料として使用することである。日本の国策として位置づけられている。
使用済み核燃料の再処理事業は、青森県六ヶ所村の日本原燃が担う。電力各社が共同出資してできた株式会社である。ここでウラン、プルトニウム等を取り出し、再び燃料として再利用することになる。ただ、日本原燃の再処理工場は相次ぐトラブルで完成が22回も延期され、竣工は2016年3月の予定だ。再処理工場の完成がさらに遅れると、各原発が抱える使用済み核燃料の持って行き場がなくなり、原発の再稼働計画に影響を与える可能性もある。
日本はすでに国内外に47トンを上回るプルトニウムを保有している。日本は核拡散防止条約に加盟しているが、核武装していない国としては例外的に核燃料を再処理してプルトニウムを生産することが認められている国だ。このプルトニウムを燃料とする核燃料サイクルは、資源のない日本にとっては、資源を最大限活用できるまたとない方法といえる。
この再処理の際に高レベルの廃液が出るが、これをガラス固化した上で処分する。処分方法は、宇宙に捨てる、深海の底に沈める、南極の氷床の底に置く、地上で長期間保管するなどいろいろ考えられているが、いずれの方法も技術的な問題や条約等で実現不可能とされている。