「私の経験則ですが、ビジネスモデルを確立した時期のメンバーは業界の全体感が見えている。いわゆる“風を読む”ことができるんです。しかし、ギャップのようにSPAという画期的なモデルが確立された後の社員は、そのシステム維持を前提とした仕事をするので、業界全体を俯瞰できない。ギャップも、そうした企業が陥りがちな罠にハマり、ビジネスモデルの改革が遅れてしまったのではないでしょうか」(同)
ブランド力の低下と次世代モデルへの乗り遅れが、大規模な縮小という事態を招いてしまったようだ。
ネット通販も“負け戦”になる可能性
北米での大規模閉店の余波は、日本にも訪れるのだろうか。
「日本でも原宿店が5月に閉店するなど、すでにGAP撤退の兆しは見え始めています。連日セールをしているのは、訴求力がないので、そうでもしない限り売れないということです。典型的な末期症状ですね」(同)
このままでは、OLD NAVYと同じようにGAPが国内から完全撤退する可能性も高い、と指摘する北村氏。日本市場では、ほかの国と違う事情も関係しているという。
「『ユニクロ』と『しまむら』の存在が大きいでしょうね。ベーシック衣料の分野では、価格・質ともに簡単には勝てない。12年に参入したOLD NAVYも、カテゴリーの近い『GU』に太刀打ちできませんでした」(同)
原宿店の閉鎖について、ギャップジャパンはネット通販に投資するためのブランド戦略の転換だと発表している。しかし、ネット通販市場でもGAPを待つのは茨の道だ。
「これほどブランドの価値が毀損している状況で、ネット通販で成功するとは考えにくいですね。そもそも、ギャップはネット通販の黎明期にすでに店舗網を確立していたため、ネットへの対応が遅れてしまった。そのため、ライバルブランドとの差は歴然です」(同)
もはや八方塞がりのギャップ。ファッション業界に限らず、この栄枯盛衰から学び取る教訓は多いのではないだろうか。
(文=沼澤典史/清談社)