牛丼店やラーメン店などがお酒やおつまみのメニューを拡大して仕事帰りのビジネスパーソンの需要を掘り起こした「ちょい飲み」ブームが到来して久しい。現在では、そのちょい飲みを昼間の時間帯にまで広げた「昼飲み」が人気になりつつあるという。
しかし、一般的なビジネスパーソンにとっては、まだ陽の高いうちからゴクリとのどを潤すのはなかなか難しい。結果的に、この昼飲みを謳歌しているのは主婦やリタイア世代などがメインのようだ。
居酒屋だけでなく、最近はファミリーレストランなどの業態もこぞって昼飲みを始めている。「ハッピーアワー」などの呼び名で、平日の昼間に格安でお酒が提供されているのだ。
「ガスト」や「バーミヤン」では、ランチとディナーの間の時間帯を埋めるように、平日14~18時(店舗によって変動)限定でビール、サワー、ハイボールなどのアルコール類が1杯200円で提供されている。飲み放題制のように元を取れるかどうかを気にする必要もないので、「食事のついでの1杯」を気軽に楽しむ人は多いようだ。
経済評論家の加谷珪一氏によれば、数年前からはやりだしたちょい飲みや昼飲み導入の背景には、過当競争にさらされている飲食店側の深刻な事情が透けて見えるという。
「今の日本は消費が低迷しており、飲食店は価格を上げると来店客数が減り、下げると利益が出ないという板挟み状態です。そこで、来店客数と客単価のアップを実現するために思いついたのが、ほかの業態から顧客を奪ってくるという作戦です。その具体策のひとつが、ちょい飲みでした。昼飲みも同様の戦略と思われがちですが、こちらは既存客に対するアプローチという明確な違いがあります」(加谷氏)
昼飲みのターゲットはファミレスのメイン層である主婦や年配客で、その点でも、仕事帰りのビジネスパーソンを狙ったちょい飲みとは違う戦略であることがわかる。
「安いお酒を求める層をターゲットにすると、お店の雰囲気が少々悪くなってしまう可能性があります。一方、主婦が少しお酒を飲んでいる分にはお店の雰囲気は変わらないため、事業者としてはぜひ取り込みたい顧客層といえます」(同)
居酒屋よりカフェの方が“昼飲み”しやすい理由
また、消費者に対して、昼から酒を飲むことの心理的ハードルを下げるイメージ戦略も進めているという。
「昼飲みを推奨することで、主婦たちの間でアルコールが入るママ会を許容する雰囲気ができ上がってきています。提供者側の“仕掛け”で利用者側の意識を変化させ、新しいニーズを生むという戦略です」(同)
カフェの「プロント」は、カフェタイムにもカクテルなどのおしゃれなアルコールを楽しめるようにしている。ファミレスの「ジョナサン」では、焼酎のミニボトルを頼めば無料でドリンクバーがつき、自分好みの焼酎割りをつくることができる。自然に飲めるスタイルを提供することで、見た目は変わらずに単価はアップできるというわけだ。