「冷え切った」会社が急増?職場で孤立し精神病む若者、彼らを理解できない上司…
さらにM氏は驚くべき事実を教えてくれた。
「企業と契約しているメンタルクリニックのなかには、『ご相談内容は会社には秘密にいたします』と謳いながら、社員の相談内容を会社の上層部に伝えているところがあります。それを人事考課に反映しているようです。
もちろん、私のところを含めてほとんどのメンタルクリニックは法令遵守していますから、このような悪質なところは例外中の例外です。これは強調しておきます。しかし、これは社員の人間関係が冷え切った企業が増えてきていることを物語っていると思います」
例外的な事例とはいえ、M氏が教えてくれた事実は、かつて日本にあった「企業と社員」の家族的なつながりの崩壊を意味しているように思う。
新卒者の3割が3年以内に離職
ここで、厚生労働省が発表している新卒者の離職率をみてみよう。
<高校>
1年以内離職率・・・19.9%(平成25年度就職者)
2年以内離職率・・・31.4%(平成24年度就職者)
3年以内離職率・・・39.6%(平成23年度就職者)
<大学>
1年以内離職率・・・12.7%(平成25年度就職者)
2年以内離職率・・・23.3%(平成24年度就職者)
3年以内離職率・・・32.4%(平成23年度就職者)
(厚生労働省「新規学校卒業者の在職期間別離職状況」より)
就職後3年で、実に3割以上が離職している。日本的経営といわれた「企業と社員」の家族的なつながりは、もはや面影もない。
最近では、ユニクロが3年で離職率5割といわれ、「ユニクロの店舗の正社員の休業者のうち42.9%がうつ病などの精神疾患」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/2013年3月9日号>)という報道もあった。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、そのようなイメージを払拭するため、10月から社員の希望に応じて週休3日制を選べるようにした。
ファーストリテイリングだけでなく、多くの日本企業が「社員との関係改善」を大きな課題として抱えている。それも、かつてはなかった「ブラック企業」という名称にみられるような新しい評価が生まれたことも要因だろう。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー)