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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「合わなくなったコンタクトを使い続ける…」問題解消!無償交換実現、メニコンの卓越戦略

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

メニコン:メルスプラン

 関係性マーケティングに関する文献を読み、大変感心した筆者はその後、多くの事例について調べてみましたが、うまく実践できているケースはなかなかありませんでした。こうしたなか、メニコンが行っているメルスプランは関係性マーケティングの実践における成功事例として興味深く、以下にその概要を紹介します。

 メニコンは日本のコンタクトレンズのトップメーカーではあるものの、ジョンソン・エンド・ジョンソンやボシュロムなどの大手外資系メーカーと比較すれば、規模において大きく見劣りします。90年代後半ごろから、市場で大きな影響力を持ち始めた使い捨てコンタクトレンズにおいて、外資系メーカーは豊富な資金力により、大々的なテレビ広告をはじめとするプロモーションにより、影響力を強めてきました。

 こうした大手外資系メーカー主導の使い捨てコンタクトレンズに対して、自社のハードおよびソフトコンタクトレンズ市場を死守するべく、メニコンが打ち出したのがメルスプランです。それまでは単発でコンタクトレンズを販売していたわけですが、メルスプランは会員制で、顧客は会員となって月会費を支払います。コンタクトレンズをお使いの方であれば記憶にあると思いますが、例えば「自分の視力とやや合わなくなった」「コンディションが少し悪い」といった場合でも、コンタクトレンズは高額商品のため簡単に新しい商品を買うわけにもいかず、無理して使い続けるというケースが少なくなかったようです。メルスプランでは、こうした場合に無償で交換してくれます。つまり、コンタクトレンズを安心して使うことができるサービスを提供しているわけです。

 商品の単発的購入ならば消費者はその都度、気軽にメーカーや購入する店を替えてしまいますが、会員になり会費が口座から引き落とされるとなると、深く考えず継続する場合が多く、他社との差別化に極めて効果的です。さらに、サービスを継続している間は他社よりも有利に会員との接触が可能となるため、関係性を強化しロイヤルカスタマー化させるチャンスが広がります。

 こうしたサービスを実践するためには、物流システムの完備、会員からの問い合わせ窓口となるコールセンター、販売店への教育など、多くの準備が必要となったわけですが、こうした課題をうまく乗り越え、メルスプランを実現しています。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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