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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「合わなくなったコンタクトを使い続ける…」問題解消!無償交換実現、メニコンの卓越戦略

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 江戸時代でも客の取り合いなど、店同士の競争はあったはずですが、一般に「企業間競争の激化」といったフレーズが頻繁に登場するのは1980年代以降でしょう。それから30年以上が過ぎ、多くの商品群において現在の市場は飽和してしまっています。

 しかも、規制緩和国際化の影響を受け、競合他社が増加している業界も多く、他社との差別化を狙った新商品がどんどん市場に投入されています。例えば、冷蔵庫や洗濯機などは白物家電と呼ばれていますが、現在の豊富なカラーバリエーションを踏まえれば、もはや白物家電という言葉は意味をなしません。

 一方、消費者に注目すると、例えば多くの耐久消費財に関してはすでに保有済みの場合が多い状況です。保有していない消費者、たとえるなら、おなかがペコペコの消費者なら自分の好物でなくとも食いつくでしょうが、すでに満たされている消費者の場合は商品や価格など、ニーズにぴったりのモノ以外はまったく受け付けないはずです。しかもインターネットを代表とする情報通信技術の急速な進展の影響を受け、世の中にどういう商品があるのか、その特徴、価格など、簡単に詳細まで確認することができてしまいます。

 こうした消費者への対抗策として、ただでさえ飽和状態の市場にどんどん新たな商品が投入されています。もともと、販売というプロセスは調達や生産などと比較し、不確実性の高いプロセスですが、このような状況において、商品が売れるか否かに関する不確実性は極めて高くなっています。

 みなさんは、こうした難しい状況において販売における不確実性を低下させる、素晴らしいアイデアをお持ちでしょうか?

関係性マーケティングとは

「合わなくなったコンタクトを使い続ける…」問題解消!無償交換実現、メニコンの卓越戦略の画像2『「高く売る」戦略』(大崎孝徳/同文舘出版)

 販売における不確実性を低下させる手法のひとつに、「関係性マーケティング」があります。従来のマーケティングでは販売時への注力や新規顧客の獲得が重視されていましたが、関係性マーケティングは販売前後における顧客との関係性を重視、既存顧客の維持にも注力しようというマーケティングです。とりわけ、人口が減少している日本などの先進国において新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持のほうが費用対効果の面で有効であるとの研究が数多く報告されています。

 こうした関係性マーケティングは80年代に登場しましたが、2000年代に入り注目を集めるようになります。顧客との関係性を深めるためには顧客情報の収集や個別の顧客との双方向コミュニケーションが重要となりますが、急速に進展してきたインターネットに代表される情報通信技術により、大きなコストをかけることなく、有効に実現できると多くの研究者や企業が考えたからです。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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