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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

東洋ゴムは反社会的勢力である 市民に直接危害を与えかねない社会毀損行為を繰り返す

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

アメリカなら刑務所行き

 01年にアメリカで倒産したエンロンの事件では、少なくとも8人の役職者が収監された。決算を粉飾して投資家を欺き損害を与え、最終的には倒産させてしまった事件だ。これは経済事案で、今年問題となった東芝の粉飾類似事件はエンロン事件と構造も似ているし、悪質性も似ている。

 エンロンや東芝などの事件に比べれば、東洋ゴムの場合は直接市民の健康や安全に危害を加える恐れがあり、害悪度が高く、罪が重いのだ。

 日本はもちろん法治国家なので、対応する法規が事前に存在しなければ責任者を刑事罰に問うことはできない。東洋ゴムの品質責任者や経営者を、未必の故意で立件することも難しいのだろう。現に三菱自動車は2000年、04年とリコール隠しを繰り返し、当該する問題を抱えていた同社製自動車による死亡事故さえ起きていたのに、企業としてはいまだに存続してしまっている。

 東洋ゴムではデータ偽装の発覚が2回目となって、今年7月に山本卓司社長らが引責辞任したのは当然といえる。それに続いての3回目なので、もはや経営陣の退陣では責任を取ったということにはならないだろう。

 私の見解では、同社は社会に危険や害を成す製品を流布させた、しかもそれを知っていて隠蔽した。そんな市民に敵対する企業は速やかに解散して、遺留財産はお詫びのために社会福祉団体にすべて寄付するのがいいだろう。

「ばれなければいい、誰かに迷惑がかかっても仕方がない」という行為が3回も繰り返されたというのは、それが染みこんだ企業文化だからだ。「問題となっているのは一部の行為で、全部をそう見ないでほしい」というのは誤りで、そんな企業を許すべきでない。2回目、3回目のデータ改竄が行われたとされる明石工場を閉鎖することなどで、全社的に改善されるはずがない。

 ぜひ消費者運動によって、同社製品の不買運動をしたり、行政が購買停止、あるいは長期の入札停止などして社会的懲罰を与えるべきだと私は考える。タイヤなら、ほかのメーカーのものを買えば済むことだ。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

※ 本連載記事が『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディア・パブリッシング/山田修)として、11月13日に発売されます。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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