トップ高校生の進学先が多様化 日本の大学「教え方」改善に競争力向上のチャンス?
このデータを見ると、正直思ったほどではないという感想を持たれるかもしれない。大学院レベルで欧米大学へ行くと、中国人、インド人、韓国人、台湾人の多さ、一方で日本人の少なさに、驚きと失望を隠せないからだ。
13年に「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)のインタビューを受けた際、筆者は「今後5年で海外大学進学者は飛躍的に増加する可能性がある」と述べたが、実際には20年頃に台湾の進学校と同レベルの海外大学進学率あたりに収まる可能性もある。
国内で海外大学進学志望者がある程度の母集団になると、海外大学進学のニーズに応える教育サービスが提供されるようになる。たとえば、駿台予備校では「スーパーアルファ・海外難関大併願コース」を設けている。スーパーアルファとは、現役高校生の最難関クラスであり、その中から海外難関大も併願を狙うコースである。ただ内容を見ると、通常のスーパーアルファの講義内容(英語・国語・数学・理科・地歴)に加えて、TOEFL、SAT(大学進学適性試験)対策をやるだけの内容であり、それほど目新しさがあるわけではない。
もっとも、現役高校生優秀層を、東京大学受験に特化した学習塾の鉄緑会や理数系を中心にした少数グループ学習塾のSEGに奪われている現状では、こういう打ち手は差別化になるだろう。また、駿台予備校と比較して相対的に小規模な鉄緑会やSEGには模倣しづらい戦略であり、海外大学進学も検討している受験生には魅力的な選択肢になると考えられる。
いずれにしても、高校生にしてみれば海外大学進学の機会も、そのサポートも次第に充実してきている。国内大学の凋落が激しい中で、海外大学進学の流れが進むことはあれども収まることはないだろう。
日本の大学は、教え方が劇的に悪い
では、そういう環境下において、国内大学はどう対応していったらよいのだろうか。いろいろな打ち手が考えられるが、ここでは、教育の質について考えていきたい。
筆者は教育の質には、「扱っている内容」と「教え方」があると考えている。海外の大学で講義を受けて「あれっ?」と思うことのひとつに、「扱っている内容」が思ったほどレベルが高くないことが挙げられる。これはハーバード大学経営大学院での講義でも、そのほかの大学でも同様だ。