トップ高校生の進学先が多様化 日本の大学「教え方」改善に競争力向上のチャンス?
日本の大学で受けている講義の「内容」のレベルと比較すると、当たり前のことを高らかに講義していたりする。したがって、日本の大学の講義の「内容」のレベルが、海外大学と比較して、劣っているとは経験則でも考えられない。
しかし、劇的に劣っているのが「教え方」である。これは本当にどうしようもなく、筆者自身の経験則でも、東京大学や京都大学の卒業生は、プレゼン能力の高い順に「外資系コンサルティング会社・投資銀行」「大手商社」「大手広告代理店」へ入り、その後、「都市銀行」「メーカー」となり、プレゼン能力を必要としない層が「官僚」になる。それ以上にプレゼン能力が足りない層が大学院へ進学し、大学で教鞭を執るようになる。一方で、大学で熱心に勉強するのは、むしろ「大学で教鞭を執る層」「官僚」だ。
だから、筆者自身も学生時代そうだったが、京都大学で講義を受けても、もうどうしようもないつまらない講義しかなかった。「内容」は面白いのだが、「教え方」がどうしようもないのだ。一方、ハーバード大学をはじめとして、海外大学の90分の講義はそれ自体がひとつの完成されたショーであり、芸術作品である。90分、講義に引き込まれ、魅了され、仮に「内容」が日本の大学に及ばないにせよ、学生の吸収率は飛躍的に高くなる。その結果、学生が成果を出せるようになる。
このように考えると、「教え方」の問題を解決するだけで、日本の大学の魅力、競争力を改善する一助となると考える。
プレゼン能力の欠如は、論文にも表れている。論文の引用数が少ないのは、英語の問題もあるだろうが、伝え方が下手だからだ。せっかく優れた「内容」をうまく伝えることができれば、論文の引用数も現在より向上するはずである。
(文=牧田幸裕/信州大学学術研究院<社会科学系>准教授)