米環境団体の依頼を受けて調査したウエストバージニア大工学部は、VWのディーゼルエンジン車に堀場製作所製の測定装置を載せ、実際に路上を走行させて排ガスを検査した。車体を固定して行う試験場での検査結果と比較して、窒素酸化物(NOx)が基準より最大で35倍多いことを、同大学は2014年5月に公表した。
これを受けて、米環境保護局(EPA)が調査に乗り出した。その結果、VWが一部車種に違法ソフトウェアを搭載し、試験時には排ガス浄化装置がフル稼働して基準を満たす一方、実際の走行時には機能が大きく低下することがわかった。VWは当初、不正を認めなかったが、EPAは試験場での数値と実際の走行時の数値の食い違いを説明できなければ新型モデルを認証しないと警告。追い詰められたVWは、試験場での排ガス試験の場合にだけ浄化装置をフルに稼働させる違法ソフトを搭載していたことを認めた。
EPAは9月18日、VWによる排ガス不正を公表。世界の自動車業界を揺るがす大問題に発展した。
株価上昇
戦後間もなくベンチャー企業として出発した堀場製作所が、世界的大企業の不正解明に一役買った格好だ。ウエストバージニア大のホームページには、堀場製作所の装置を扱う研究者の写真が載っている。各メディアが掲載したのが、この写真である。
報道を受け、堀場製作所の株価は大幅に上昇した。10月2日は、取引開始から値を上げ、一時は前日比5.5%高の4600円をつけた。終値は4545円。EPAが不正を公表した9月18日の終値に比べて450円値上がりした。なお、今年の高値は7月6日の5410円である。
各国の規制強化の流れが、堀場製作所のエンジン計測器事業に追い風になるとの期待から株価は上昇した。エンジン計測器の世界シェアは8割を占める。自動車の排ガス測定では屋内で使用する据え置き型の計測器が使われてきたが、VWの排ガス不正問題の発覚で、路上走行時の排出値測定が不可欠になる。堀場製作所のポータブル計測器の需要は、一気に高まると期待されたわけだ。
一方、不正発覚によりVW株は2週間で5割近く下落。時価総額で3兆円超が吹き飛んだ。