学生ベンチャーのはしり
堀場製作所の創業者は堀場雅夫氏。今年7月14日、肝細胞がんのため90歳で亡くなった。堀場厚会長兼社長は雅夫氏の長男だ。雅夫氏は京都大学理学部物理学専攻の在学中の1945年に堀場無線研究所を創業。学生起業家の草分け的存在だ。53年に堀場製作所を設立した。「おもしろおかしく」を社是とし、過去には1日の勤務時間を少しずつ延長して休める日を増やして「週休3日制」を一部導入するなど、独特な社風を持つ。
肥料をつくるときの品質管理などに使われるpH(水素イオン濃度指数)メーターを開発。公害問題の広がりを受けて気体の分析装置の開発も進め、特に自動車の排ガス測定装置で世界に知られるメーカーに育てた。
雅夫氏は78年に53歳の若さで社長を辞し、会長に退く。かねてから「社長50歳定年」を宣言。目標の50歳から3年が経過した78年の創立25周年記念式典で正式に引退を表明。「ワンマン社長の首を切るのは自分しかいない」と述べた。引退後は、地元・京都のものづくり支援や、ベンチャー企業の育成に力を注いだ。05年から最高顧問に就いていた。
堀場製作所の業績は好調だ。15年1~9月期連結決算の売上高は前年同期比15%増の1168億円、純利益は86%増の72億円と過去最高だった。主力の自動車メーカー向けの排ガス計測装置の販売が日本や米国で増えた。半導体用の流量制御機器は韓国などの半導体メーカー向けに好調だった。
15年12月期通期の売り上げの見通しは14%増の1750億円と、期初予想から50億円増える。純利益も16%増の123億円と予想から8億円引き上げた。車両開発エンジニアリング会社の英国マイラ社の買収が業績に寄与する。英国の子会社を通じてマイラを155億円で買収した。堀場製作所としては過去最大規模だ。マイラは1946年に英政府の研究機関として設立後に民営化。英中部に297ヘクタール(東京ドーム約60個分)のテストコースを持ち、英高級自動車メーカーなどの車両の試験と設計、開発の委託研究を行っている。14年の売上高は86億円。
マイラの買収をテコに、世界有数の大規模テストコースを使った車両試験に参入した。将来的には自動運転技術や低燃費車両、電気自動車などに関する試験と、開発研究開発事業を手掛ける方針だ。堀場製作所は「技術立国・ニッポン」を代表する一社なのである。
(文=編集部)