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垣田達哉「もうダマされない」

台風19号報道で、なぜNHKは民放に圧勝したのか…縦と横の連携に“雲泥の差”

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:AFP/アフロ)

 10月12日に東日本を襲った台風19号の報道では、民放はNHKに完敗だった。NHKは12日(土)のほぼ終日と13日(日)の多くを台風情報の報道に費やしたが、民放はほとんどがレギュラー番組を放送し、一部の時間帯で特別番組を組んだが、刻々と変わる状況を伝えるにはとても満足のいくものではなかった。

 NHKは、一日中災害報道ができる環境(豊富な数のアナウンサー、スタッフと、地方局の存在)があり、刻々と新しい情報を届け続けることができた。多くの視聴者も「さすがNHKだ」と感じただろうし、民放各局は力量の差を嫌というほど感じたことだろう。それは視聴率に歴然と表れている。

 民放各局の災害報道は「人・物・金」の三拍子が豊富なNHKに太刀打ちできないが、今回の報道で致命的な格差を生んだ最大の理由は、台風の通過した日が土日だったことだ。筆者もときどきテレビに出演しているので、土日にも何度かテレビ局に出向いたことがある。民放局の土日は、一般企業と同じように驚くほど閑散としている。平日と比べて生放送番組が極端に少ないので当然のことだが、エレベーターを乗り降りする人もほとんどおらず、スタッフルームもまさに閑古鳥状態だ。筆者は土日にNHKに出向いたことがないのでわからないが、おそらくNHKも同じだろう。ただNHKには、緊急時に備えるスタッフがそれなりに控えている。

スタッフは番組単位、曜日単位

「今までにない大型の台風が上陸するのがわかっていたのだから、スタッフをあらかじめかき集めておけばよかったじゃないか」と思われるかもしれないが、それは民放には至難の業なのだ。NHKは、縦(一日の番組を通しての管理)も横(全国を一括する管理)も東京の本社で掌握し、一括管理(番組編成)ができる。

 しかし、民放各局はそれができない。横の面では地方の系列局の全面的な協力が必要になるが、グループ企業とはいえ、番組編成を強引に変更してスタッフの協力を依頼することは難しいだろう。また、縦の面でも、極端に言うと「一つひとつの番組を独自のスタッフが制作し、単にそれをつないでいるだけ」であり、他の番組と協力をしてひとつの番組をつくることはほとんどしない。

 民放では、実働部隊である現場スタッフのほとんどは、社員ではなく外注先の制作会社所属で、局の社員だけでは番組をつくることができない。NHKも社員だけで制作しているわけではないが、『クローズアップ現代+』や特集番組などでは、地方局のスタッフやアナウンサー、記者などが中心となって、東京のスタッフと共同で番組をつくる習慣がある。民放はそれができない。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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