インターネット金融大手SBIホールディングス(北尾吉孝社長兼CEO)は、島根銀行と資本業務提携した。島根銀の第三者割当増資を引き受け、グループ全体の出資比率は34%となる。取締役2人を派遣するが、持ち分法適用会社にはしない。島根銀は「20年3月期の連結最終損益は23億8000万円の赤字に転落して無配となる」と発表している。
北尾氏は島根銀の再生には、「1年もかけるつもりはない」と述べ、早期にテコ入れを完了する考えを示した。9月初旬、「地域金融機関と『第四のメガバンク構想』を実現していく」と発表。島根銀への出資(25億円)は、その第一弾である。
SBIが過半を出資して持ち株会社を設立し、大手銀行や有力な地方銀行、ベンチャーキャピタルなどに出資を募る。SBIは支援する地銀に金融基幹システムなどのインフラのほか、商品・サービスを提供、人材育成を支援したりするとしている。SBIと地銀が共同で使えるシステムをクラウド上につくる考えで、マネーロンダリング(資金洗浄)対策、業務効率化につながるフィンテックも導入する。一方で、「“ゴミ溜め持ち株会社”になる。苦しくなった地銀の駆け込み寺だ」(有力地銀トップ)といった懐疑的な見方もある。
2018年度、地銀が融資などで稼いだ本業の損益は、105行のうち4割が赤字。マイナス金利の長期化に加え、人口減少や地方経済の苦境で貸し出しが細り、地銀は抜本的な経営戦略の見直しを迫られている。金融庁は、地銀に対して統合や合併などの経営改革を以前から促してきた。しかし、金融当局が地銀の再編を主導するのには限界がある。それだけに、金融庁はSBIの積極的な関与に期待する。
“北尾構想”のひな型は、信用金庫業界の中央銀行といっていい信金中央金庫や農林系統金融機関の資産運用を一手に担う農林中央金庫だ。地銀は業績が悪化しても、公的資金の注入を極力避けたがる。SBIとつくる持ち株会社が公的資金を申請すれば、地銀は持ち株会社から資本を受け入れるかたちになり、ワンクッション置ける。金融庁は、SBIと地銀が設立する持ち株会社を通して公的資金を注入する案を練っているとされる。
北尾氏によれば、地銀10行ぐらいから打診が来ているといい、「10行集まれば、システム費用の負担が10分の1になる」と強調する。これまでもSBIは地域金融機関との提携を急拡大してきた。清水銀行をはじめ、現在は35の地銀や信用金庫と金融商品の仲介で提携している。地域金融機関は顧客をSBI証券のネット口座につなぐ。