みずほ銀行とソフトバンクが50%ずつ出資する株式会社J.Score(ジェイスコア)が、個人の信用力情報を提携企業に提供する予定を発表した。その取り組みは、同社が個人の消費行動に関するより多くのデータを獲得し、AI(人工知能)の分析能力を向上させるために欠かせない取り組みといえる。同社が目指す個人の信用評価は、今後、重要な社会インフラのひとつといえる。
ジェイスコアの取り組みは、親会社である金融機関の経営とあわせて考えるとわかりやすい。現在、わが国の金融機関は大きな変革に直面している。高齢化と少子化が進み、人口が減少している。加えて、家計と民間非金融法人企業は資金余剰の主体だ。すぐに資金需要が高まり、金融機関の収益が増える展開は見込みづらい。収益性を維持するためにコスト削減を重視する金融機関は多い。一方、海外では最先端の金融技術=フィナンシャルテクノロジー(フィンテック)関連ビジネスが強化されている。大手金融機関だけでなくIT企業も、当該分野での存在感を強めている。
環境変化への対応を考える上で、ジェイスコアの取り組みはわが国の金融機関にとって重要なインプリケーションを持つだろう。ジェイスコアの事業展開とともに、大手金融機関などがフィンテック関連ビジネスに取り組み、収益基盤の強化に取り組むことを期待したい。
ジェイスコアのビジネスモデル
ジェイスコアは、国内で初めて個人向けのスコア・レンディングサービスを提供したフィンテック企業である。この事業は、個人のスコアリングとレンディング(融資)に分けられる。ポイントはAIの活用にある。
スコアリングとは点数をつけることだ。ジェイスコアのビジネスに当てはめて考えると、個人の信用力、その変化の可能性などを評価することがスコアリングだ。それは、個人の信用格付けを行うことにほかならない。
ジェイスコアの格付けプロセスは、仮審査と本審査の2段階からなる。まず、仮審査では、AIが個人の信用力を評価する。具体的には、個人が同社に提出した情報やみずほ銀行とソフトバンクが持つビッグデータ、および銀行が持つ信用審査のノウハウを用いて個人の格付け=スコアリングが実施される。その上で、収入証明などの提出をもとに本審査が行われる。収入証明が求められるという点で、銀行カードローンなどよりも審査基準は厳しいと考える専門家もいるようだ。