少子高齢化、人口減少のなかで大学は全入時代に突入しようとしている。大学は学生を獲得するために熾烈な戦いを強いられることになる。
人気大学のランキングでは上位に入る青山学院大学も例外ではない。青学といえば、若者のファッションの聖地・青山という好立地で英語教育に力を入れてきたことから、特に女性から絶大な人気を集める大学だ。ミス青学には久富慶子、新井恵理那、福田成美、準ミスには江藤愛、田中みな実などが選ばれており、人気女子アナの登竜門としても知られている。
しかし、そんな青学も日本の大学教育には危機感を抱いているという。三木義一学長は「(急速な人工知能<AI>の発展のなかで)文系学部の仕事の大半は20年後にはなくなる」と警鐘を鳴らす。
そのため、青学も生き残りをかけて新しい取り組みを行っている。その目玉となっているのが「シンギュラリティ研究所」の設立だ。
シンギュラリティとは、日本語に翻訳すると「技術的特異点」。これだけではなんのことかわからないが、要はAIやビットコイン、ウーバーなどの新しい技術によって社会が飛躍的に変化することだといわれている。AIの普及で人の仕事の半分以上がなくなり、ウーバーはタクシー業界を消滅させ、ビットコインは既存の金融秩序を崩壊させてしまうかもしれない。
事実、アメリカの大手証券会社のゴールドマン・サックスは、AIによる証券取引を導入したことにより、2000年ごろには約600人いたトレーダーが今では数人しかいないという。さらに、弁護士や公認会計士といった高収入の花形業種もAIに取って代わられるというから、社会の価値観が大きく変わってしまうかもしれない。
しかし、そうした科学の発展を人が止めることはできない。では、そんな変化が起きたときに人はどうすればいいのか。そんな近未来の状況を予測し、新しい時代になっても人が幸せに生きられるようにと考えるのが、シンギュラリティだ。これが、シンギュラリティが「未来学」といわれるゆえんでもある。
しかし、日本ではこれまでシンギュラリティについて本格的に研究する大学はなかった。なぜ、青学がシンギュラリティ研究所の設立を決断したのか。その真意について、三木学長が語った(以下、4月22日に行われたシンギュラリティ研究所開設記念の基調講演会での話の要旨)。
大学の文系学部は不要になる?
AIの指数関数的発展にうまく対応できない文系、社会系の教育に対しては、この間、さまざまな機関から問題が指摘されております。
「大学には文系学部はいらない」
「文系学部出身の人が就く仕事の大半は20年後にはなくなる」
「日本の大学の大半は日本語での教育で、国際化ができていない。国際社会に人材を送り出していない」
これからの大学教育は、分離融合型かリベラルアーツ(学士課程において、人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野<disciplines>を横断的に教育する科目群・教育プログラム)が主流となるといわれている。