「日立ハイテクは建設業法で禁止されている丸投げをやっていたのではないのか。限りなく黒に近いという心証のため、釈明しようがないので説明会を開くことができない。もしそうでないのなら、一日も早く疑いを晴らしたほうが得策ではないのか」(建設業界筋)
そもそも「現場にいなかった」疑い
日立ハイテクは16年3月期(国際会計基準)の連結業績見通しを下方修正した。売上高は従来予想を370億円下回り、前期比3%増の6400億円。純利益は従来予想から20億円引き下げ、同4%増の324億円とした。中国景気の減速を背景にスマートフォン(スマホ)など電子機器の需要が低迷し、主力の半導体製造装置が振るわないためだ。
傾斜マンション問題で1次下請けとして関与した件は、2次下請けの旭化成建材が損失を全部被る契約を本当に結んでいるのであれば、さしたる損害は出ないだろう。日立ハイテクの建材販売部門の売り上げは年間でわずか10億円程度といわれている。連結売り上げの1%にも満たない。
業績面よりも丸投げの問題のほうが大きい。これで行政処分を受ければ、日立ブランドに傷がつく。売り上げを立てるために伝票を通すだけの丸投げ行為は、建設業界の悪弊となっている。
そうしたなか、11月9日には国土交通省が日立ハイテクに対して建設業法で定められている施工管理を適正に行っていたかどうかの調査をしていることが明らかになった。国交省は日立ハイテクが施工データなどをチェックする立場にあり、建設業法で義務付けている主任技術者を現場に配置していたかどうかを調べている。資格を持った主任技術者を専任で置いていたかどうかが焦点となる。配置していなかった場合、営業停止などの監督処分のほか、罰金100万円が科されることになる。
発注者の同意を得たかどうかや主任技術者の勤務実態について、日立ハイテクは「調査中」としている。一連の下請け構造で日立ハイテクは商社的な位置付けとされ、これまで厳しい追及の風当たりは少なかったが、ここへきて明らかに風向きが変わってきた。
11月11日、元請けの三井住友建設の永本芳生副社長は事件発覚後初めての記者会見で、「(日立ハイテクの人間は)現場にいなかった」ことを明らかにした。永本副社長は「(三井住友建設が)施工当時、日立ハイテクを介さず、旭化成建材の工事内容を直接管理した」と説明。「日立ハイテクは現場にいたか」と問われ「いなかったと思う」と答えた。
日立ハイテクはこれ以上沈黙を貫くことは許されない状況になりつつある。
(文=編集部)