横浜市都筑区で三井不動産レジデンシャルが分譲したマンションが傾いていることが公けになって約1カ月。問題は収束するどころか、マンション業界のみならず建設業界全体の問題に波及しつつある。問題の杭打ちを担当した旭化成建材は当初、一担当者個人の「異常な行動」とし、事態の収束を図ろうとしたフシが見受けられる。2005年に発覚した通称「姉歯事件」と呼ばれる構造計算書偽造問題を彷彿とさせる。
しかし、この問題は一個人の「異常な行動」ではなく、どうやら業界全体に蔓延していた「よくやらかす事象」であることが明らかになりつつある。旭化成建材に続いて業界大手のジャパンパイルでもデータ偽装が発表されたのが事態の深刻さを物語っている。
こうした問題が生じると、多くの場合、関係者は事態の収束を急ぐあまり、原因究明を十分に行わないまま、いい加減な理由をつけて「うやむや」にしようとしてしまう。責任の明確化を避ける動きでもある。肝心なのは問題が起こったとき、まずは被害者と真摯に向き合う姿勢である。今回の問題でも、売り主である三井不動産レジデンシャルは当初、マンションの傾きは東日本大震災によるもので補償対象とはならないとの説明を繰り返したといわれている。元請建設会社である三井住友建設は、下請け業者である旭化成建材からの報告がなかったことに多くの責任があるかのような発言を行った。原因がいまだ特定化されない中ではあるものの、互いが責任を逃れようと曖昧な姿勢を続けることは、今回の被害者のみならず社会全体に強い不信感を抱かせることになる。
被害者の方々には「致し方ない」ではすまされないが、事象として生じてしまったことは致し方ないこととして、今最も大切なことは、こうした事態がなぜ生じてしまったのか、原因を冷静に分析し、「二度と生じさせない」方法を考えることである。
今回の事件で再び話題となっているのが、建設業者による「手抜き工事」である。「手抜き工事」自体は今回が初めてではなく、過去にも幾多の事例がある。中には相当悪質な事例も正直あるといわざるを得ない。こうした事例の数々が今回あらためて蒸し返されているが、事例の多くが被害者からみてゼネコンやデベロッパーに対して「事象の原因」を立証することが難しく、問題の根本的な解決になかなかつながらないことである。