三井不動産レジデンシャルが販売した横浜のマンション傾斜問題をめぐり、1次下請けの日立ハイテクノロジーズが沈黙を貫いている。元請けの三井住友建設や杭打ちデータを偽装した2次下請けの旭化成建材に批判が集中しているが、日立ハイテクは10月15日に「所有者や居住者、関係者に多大なご心配をおかけしたことをお詫びする」とのコメントを出したのみ。同日、同社はマンション建設時に工程の進捗確認や現場の安全管理などを行う1次下請けであることを、初めて明らかにした。
日立ハイテクは10月26日の決算発表説明会で、マンション問題への責任の有無や業績への影響について、「現在は事実関係の確認・調査に取り組んでいる」と回答。旭化成グループとは、日立ハイテクの前身の1社である日製産業が、以前より建材について取引があったと説明した。2001年、工業資材商社の日製産業と日立製作所の計測器や半導体装置の部門が統合して日立ハイテクは発足した。日立製作所が51.6%を持つ筆頭株主で、れっきとした東証1部上場企業である。日立ハイテクの宮崎正啓社長は日製産業の出身。
日立製作所の中村豊明副社長は10月28日に開いた決算発表説明会で、日立ハイテクが1次下請けとして関与していることについて「今は日立ハイテクが実施している調査を最優先し、真摯に対応したい」と述べるにとどめた。現在まで、親会社の日立製作所も当該会社の日立ハイテクも説明責任を果たしていない。
丸投げ
「日立ハイテクが正式な記者会見を開いて説明できないのは、旭化成建材に工事を丸投げしていたことが明らかになってしまう懸念があるからだ」(建設業界筋)
建設業法では公共工事、民間工事とも共同住宅の新築工事については、請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる「一括下請負」が全面的に禁止されている。つまり下請けへの丸投げは禁止されている。
1次下請けとしての日立ハイテクの業務は、工程の管理や現場の安全確認である。もし正式に説明会を開いてその義務を十分に果たしていたのかを質問されれば、「調査中」と逃げるわけにはいかなくなる。10月27日付日本経済新聞は次のように報じている。
「問題があった場合の責任は2次下請けが負うとの契約を結んでいたという。技術的な知見はなく、旭化成建材の担当者が改ざんした工事データの『信憑性は判断できなかった』」(日立ハイテク幹部)
この発言からは、実態としては2次下請けに丸投げだったという疑いが持たれる。さらに、「技術的知見」もなくなぜ工事の進捗確認や現場の安全確保という業務を行えたのかなど、根本的な疑問が浮かび上がってくる。