「裏切られた」
横浜市都筑区のマンションが施工不良で傾いた問題で、建設工事の元請け会社である三井住友建設の口から出た言葉は、2次下請けの旭化成建材に責任を転嫁するものだった。
三井住友建設は11月11日、2015年9月中間決算発表の席上で陳謝した。一連の問題発覚後、公の場で謝罪するのは初めて。それも発覚から1カ月を経過してからだ。会見には新井英雄社長でなく三井住友銀行出身の永本芳生副社長が出席した。永本副社長は杭打ち工事を担当した旭化成建材がデータ流用などの改竄を行ったことに関し、「元請けとしての責任を重く受け止める。工事の不具合やデータ流用を見抜けず、慙愧の至り」と管理責任を認めた。
一方、旭化成建材に対しては「信頼関係を過信しすぎた。ちゃんとやってもらえると思っていた。事前打ち合わせの通りの杭打ちをしてもらえず、裏切られた」と批判した。データ改竄を見抜けなかったことに関しては謝罪したが、それ以外は「旭化成建材に責任がある」との主張を繰り返し、「当社も被害者」というイメージを世間に植え付けようとする姿勢がにじみ出ていた。
マンションの建て替えには、300億円に上る対策費が必要になるといわれている。売り主の三井不動産レジデンシャル、元請けの三井住友建設、1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、2次下請けの旭化成建材が責任に応じて負担することになる。会見における三井住友建設の姿勢からは、旭化成建材に責任を負わせて少しでも負担を減らそうという思惑が見え隠れする。
設計ミスは認めず
横浜のマンションは4棟構成で、旭化成建材が三井住友建設の2次下請けとして計473本の杭を打ち込んだが、70本の施工データが改竄され、このうち1棟の杭6本は地盤が固い支持層に届かず、2本が打ち込み不足だった。三井住友建設は事前のボーリング調査で支持層の深さを14メートルと推定して杭を発注した。
だが、実際の支持層の深さは16メートルで長さが不足している杭が打ち込まれていた。旭化成建材側はデータの改竄は認めたものの、「三井住友の設計通りに杭を打った。設計に問題がある」と指摘した。マンション傾斜問題の発端は三井住友建設の設計ミスだった、といわんばかりだ。
三井住友建設は「想定が外れたのはうちの責任」と設計ミスを認めたが、11日の会見で永本副社長は設計ミスとの指摘を否定。「(事前調査は)地盤の深さ、地質を推定するための暫定値」であるとし、実際の地盤の状況の確認は旭化成建材の責任だ、と主張した。想定より支持層が深いことを報告しなかった旭化成建材に「裏切られた」というのである。