プロレス人気は収まる気配を見せない。一時は低迷していたものの、業界最大手の新日本プロレスを筆頭に、ここ数年で急速に盛り上がりを見せている。関連書籍や写真集も数多く発売されているほか、レスラーたちはテレビや一般誌なども席巻。女性ファンを指す“プ女子”という言葉も生まれるなど、まさに社会的な人気となっている。
多くのスター選手を抱える新日本プロレス、エンターテインメント満載のさまざまな企画でファンを楽しませるDDTプロレスリング、華麗な空中殺法で観客を魅了するDRAGON GATEなど多くの団体があるなかで、“デスマッチ”という過激なプロレスを売りにしているのがFREEDOMSだ。蛍光灯、画びょう、剣山、カミソリ、ガラス、有刺鉄線といった危険な凶器を用いて試合をするため、流血は当たり前。ときには傷口から骨が見えることすらある。
しかし、そのようにクレイジーなプロレスにもかかわらず、試合会場には毎回多くのファンが訪れる。プロレス初心者も多く、リピート率も高い。過激ゆえに敬遠されそうに思えるデスマッチだが、なぜFREEDOMSは根強い人気を誇り、裾野を広げ続けているのか。代表兼レスラーの佐々木貴氏に話を聞いた。
交流を通じてファン拡大
「不器用で効率が悪いかもしれませんが、僕はとにかく色々なところに足を運びます。そこでたくさんの人と知り合い、横のつながりを広げることを大事にしています」(佐々木氏、以下同)
FREEDOMSに新規ファンが多い理由のひとつを、佐々木氏はそう話す。同団体には営業マンがいない。代表である佐々木氏自ら、大会を行う地域の飲食店などに足を運び、出会った人たちとの交流を通じてPRを行っているのだ。
「スーツを着た営業マンが『チケットを買ってください』と言ったところで、誰が買ってくれるのかという話です。直接顔を見て話すことで信頼してもらえますし、相手の心にも響くのだろうと思います」
もちろん、勧誘のようなマネは一切しない。あくまで自分の人間性を知ってもらい、その上で生業にしているデスマッチという分野を、エンターテインメントの選択肢のひとつとして提示しているだけだ。非常に泥臭いが、効果は高い。あるとき、知り合いのバーが主催する梨狩りに誘われ、佐々木氏はひとりで参加した。プロレスファンはほぼ皆無だったが、そこで出会った参加者たちが、10人ほど試合を観に来てくれたという。