「レスラーたちは、みんな体の大きさも違い、性格や試合スタイルも人それぞれ。できることも違うので、自分が持っている以上のものを出そうとしても、どこかで躓いてしまいます。したがって、周囲に振り回されず自分の長所を最大限に伸ばすことが大事です。それが結果的に個性にもつながるからです」
本人の意向を無視して、「イケメンレスラーに仕立てよう」「覆面をかぶせよう」などと強制することはない。つくられたキャラクターではないため、レスラーたちは無理に演じる必要がなく、結果的に最高のパフォーマンスが発揮できるのだ。しかし、自己プロデュースが必要になるため、方向性に迷うレスラーもいる。そんなときに佐々木氏がアドバイスするのは「原点回帰」だ。
「自分がどんなレスラーになって、どんな試合をしたくてこの世界に飛び込んできたか。それを思い返した時に、自分のスタイルや生き様が見えてくると思います。あとは徹底的に追求して、自分だけの世界観を築き上げてほしいですね」
「非日常感」がファンサービス
ファンサービスの手厚さもFREEDOMSの特徴だ。デスマッチというスタイルゆえに、試合後の選手たちは傷だらけだが、治療を後回しにして物販コーナーに立って笑顔でファンに対応するのが常だ。
「もともと僕はプロレス大好き少年だったので、ファンの気持ちがよくわかります。さっきまでリングにいて手の届かない存在だった選手が、握手をしたり一緒に写真を撮ったりしてくれる。そうすれば必ず次につながると思うのです」
非日常の演出、という側面もある。
「ファンの多くは、非日常を楽しみたくてプロレスを観に来ています。そうであれば、それをとことん追求したいです。病院に運ばれてもおかしくない状況のレスラーたちが、売店で『いらっしゃーい』と笑顔を振りまいているのは、完全に非日常です」
プロレスブームの恩恵はあったとしても「そよ風レベル」だと佐々木氏は言う。そもそもブームに便乗するつもりはない。
「僕らのプロレスは地上波で放送できないので世の中に響きにくいですが、今はインターネットもあります。観に来てくれたお客さんが、『FREEDOMS、めちゃくちゃすごかった!』という具合にSNSに書き込むことで少しずつ広まっていくと思います。そのためにも、常にとことんすごい試合をして、『会場に足を運ばなきゃ!』と思わせないといけないのです」
デスマッチというジャンルゆえに、メディア露出は少なくネガティブな先入観を持たれることも多い。しかし、それを覆して新規ファンを獲得し、リピーターになってもらうための地道な戦略をFREEDOMSは続けている。その結果、ブームとは一線を画した強い基盤を築いているのだ。経済や社会状況に左右されない、強い企業づくりを目指すビジネスパーソンは、FREEDOMSの試合を一度観に行ってみてはいかがだろうか。
(文=肥沼和之/ジャーナリスト)
■大会情報
「FREEDOMS 葛西純プロデュース興行」
日程:12月25日(金)
開始時刻:19時~
会場:後楽園ホール
http://pw-freedoms.co.jp/