「僕らの知名度では、FREEDOMSと名乗っても『知らない』と言われることが多い。けれど大会のポスターを持っていって、『プロレスやっています。ここに載っているのは僕なんですよ』などと話しているうちに、『じゃあ、一度観に行ってみるか』と思う人も出てくるんです」
マーケティングコンサルタントであるジェイ・エイブラハムの「営業とは、人間関係だ。一番強固な関係を築けた人が、その信頼関係によって相手に買わせることができる」という言葉を体現し、新規ファンを増やし続けているのだ。
リピーターを獲得し、黒字化
新規ファンが増え続ける理由のひとつに、初めての地域でも積極的に興行を開催していることが挙げられる。たとえば、後楽園ホールなど、何度も興行を行っている場所であれば、集客や経費の見込みを立てられるため、最終的な利益を予測できる。しかし、初進出する地方ではまったく読めないため大きなリスクも伴うが、まずはチャレンジしてみるのがFREEDOMSの流儀だ。
「1回目は田植えですよね。大会をすることで、まずはFREEDOMSを観に来てもらうきっかけをつくる。そこで本当に良い試合をすれば、半年~1年後にまた興行をしたとき、口コミでファンが増えたり、最初に来てくれた方が今度は友達を誘って来てくれたりするかもしれませんから」
1回目が赤字でも、「この地域は儲からない」と切り捨てることはしない。足を使ってPR活動をし、最高の試合を提供する。地道にそのサイクルを繰り返すことで、必ず良い結果につながるからだ。実際に、これまでの地方大会で初回から黒字になったのは一度だけ。しかし、4~5回目からは必ず黒字が生まれている。同時に根強いファンが育っていくのだ。
ただし、初めて観戦した客がリピーターになり広がっていくためには、相応の価値提供が必要となる。「『つまらなかった』『お金を払って損した』と思われたら最後です」と佐々木氏は語る。
そのため、FREEDOMSでは、「試合内容」と「ファンサービス」に徹底的にこだわっている。まず試合内容に関しては、佐々木氏は「僕らのプロレスを観た人が、何も心に感じずに家路につくことは絶対ない。今後の人生に影響を及ぼすような何かを、絶対に感じてもらえるはず」と自信を覗かせる。その秘訣は、10名の所属選手たちに何かを押し付けるのではなく、本人のしたいようなプロレスをさせているからだという。